抄録
本稿は世界の株価の短期および長期の連動性を地域と産業の両面から分析する. コヒーレンスを連動性の尺度としてアジアと米国の日次株価データにファジィクラスター分析を応用した結果, 短期的にも長期的にも国効果が産業効果を上回ることが分かった. つまり, 同じ国に属する銘柄は高い連動性を有する一方で, 同じ産業に属する銘柄はそれほどでもない. この実証結果は, 1か国を選んでその中で様々な産業に投資するというポートフォリオ戦略が, ひとつの産業を選んでその中で様々な国に投資するという戦略よりも高いリスクを有するという実務的に重要な示唆を与える. また, 強い国効果の存在から, 現代株式市場におけるグローバリゼーションの遅れという学問的な知見も得ることができる. もうひとつの興味深い発見は, サブプライム金融危機後に銘柄間の相関関係が短期的にも長期的にも高まったことである. このことから, 金融危機後の株式市場においては分散投資によるリスク軽減の効果が享受しにくくなっていると言える