阿蘇カルデラ内北部の本塚・北塚・灰塚はいずれも石英安山岩の溶岩からなる古い中央火口丘で,それらの下底部には海抜約510mのレベルまで水冷により破砕された溶岩が発達している。故にこの水中溶岩が噴出した時期にはカルデラはこのレベルまで湖であったと推定される。この水中溶岩は大小の岩塊と同質の細片からなり,その中には枕状溶岩に類似した柱状節理をもつ岩塊が含まれている。この種の岩塊は多くの点で通常の枕状溶岩とは異なっているので,偽枕状溶岩と呼ぶことにする。その産状の詳細な観察によれば,偽枕状溶岩は,水中を前進中の粘性の高い溶岩に湾曲した割れ目がはいり,これに沿って侵入した水で急冷され,分離したものである。このため偽枕状溶岩は表面に垂直な柱状節理を生じているが,通常の枕状溶岩とちがって外形はもとの流理構造を明瞭に切っている。