抄録
東京都小笠原父島北東海岸の初寝浦付近には,無人岩の枕状溶岩が広く分布している。筆者らの一人(西戸)はその空隙をうめて,キフッ石,モウフッ石,カイジュウジフッ石などのフヅ石および緑色粘土を伴なって産する淡褐色の粘土を見い出した。その後の室内研究により,この粘土は加水タルクを主とし,極く少量中の不透明鉱物を伴なうことが明らかにされた。その粘土の化学分析の結果から, 22の陽電荷をもとにして求めた構造式は以下の通りである。
(Mg2.87Mn0.022+Fe0.093+)(Si3.95Al0.01)010(OH)2・Ca0.03・Na0.05・K0.01・nH2O.
この論文では,このほかにその陽イオン交換能および交換性イオン, X線回折データ,熱分析データ,赤外吸収スペクトル,電子顕微鏡像が示されている。