岩石鉱物鉱床学会誌
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岩手県釜石鉱山産銅硫化物鉱石中のスマイス鉱について
今井 直哉鞠子 正志賀 美英市毛 芳克
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1976 年 71 巻 9 号 p. 255-263

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抄録

釜石鉱山の目峰・新山両鉱床産銅硫化物鉱石よリスマイス鉱がみいだされた。このスマイス鉱は少量のニッケルを含み,その化学組成は(Fe3.18Ni0.06)3.24S4.00で示され(Fe, Ni)9S11に近い。その反射率はγ=560nmの単色光のもとで36~42.8%であって,ビッカース微小硬度は25gの荷重のもとで284~304kg/mm2を示し,いずれも共存する単斜型磁硫鉄鉱のそれらよりわずかに高い。また, HI溶液だけでなく, KOH溶液の腐蝕試験により単斜型磁硫鉄鉱と明確に区別できる。そのX線回折パターンは,まだ若干の問題をとり残しているが,これまでに発表されたスマイス鉱のそれらξかなり良好な一致がみられる。
このスマイス鉱は,恐らく硫黄フィガシティーの比較的高い熱水溶液による六方型磁硫鉄鉱から単斜型磁硫鉄鉱への変質にひきつづき後者から導かれたhypogene alterationの産物と考えられ,硫化物形成の最末期の75°C以下の温度条件下で生成したものであろう。

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