岩石鉱物鉱床学会誌
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H2O-CO2混合流体中における灰バンザクロ石の安定領域
正路 徹也
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1977 年 72 巻 1 号 p. 30-41

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抄録

従来発表されているCaO-Al2O3-SiO2-H20-CO2系の研究結果をもとに, H2O-CO2混合流体中における灰バンザクロ石の安定領域を求めた。灰バンザクロ石の安定領域を決める反応は,高温から低温へ,次の4つの反応である。
(1)灰バンザクロ石+CO2=方解石+灰長石+珪灰石
(2)灰バンザクロ石+CO2=方解石+灰長石+石英
(3)灰バンザクロ石+CO2+H20=方解石+ユウレン石+石英
(4)灰バンザクロ石+CO2+H20=方解石+ブドウ石
これらの反応の交点として, 3つの不動点が存在する。A点(方解石-珪灰石-灰バンザクロ石-灰長石-石英): 1000バールで, T=564°C,XCO2=18.8 mole %, 2000バールで, T=575°C, XCO2=13.9 mole %; B点(方解石-灰バンザクロ石-ユウレン石-灰長石-石英): 1000バールで, T=461°C, XCO2=5.18 mole %, 2000バールで, T=503°C, XCO2=6.30 mole %; C点(方解石-灰バンザクロ石-ユウレン石-ブドウ石-石英): 1000バールで, T=406°C,XCO2=1.60 mo1e %, 2000バールで, T=405°C, XCO2=0.919 mo1e %。鉄を含む系で,ブドウ石と鉄酸化物の組合せが不安定な温度では,次の反応,
(3')グランダイトザクロ石+CO2+H20=方解石+緑簾石+石英+赤鉄鉄(又は磁鉄鉱)
が, H2O-CO2混合流体中で安定に存在しうるグランダイトザクロ石の生成条件の限界を決定する。方解石,ザクロ石および石英からなる鉱石鉱物を伴うスカルンの生成するCO2条件の上限と下限はそれぞれ,反応(3')および次の反応,
方解石+石英=珪灰石+CO2
により決定される。

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