抄録
菱沸石-(SiO2)-H2O系の変質実験(200~350°C, 20~1000バール, 24-336時間)により,菱沸石の安定条件および生成沸石相の反応関係を検討した。反応系に過剰のシリカを添加した場合は無添加の場合に比べ菱沸石の分解曲線は約40°C高温側にシフトする(200バール, 230°C→270°C)。菱沸石の分解にともない,温度の上昇に応じて,つぎの鉱物相が出現する。[Chabazite-H2O系]: Ca-重十字沸石+ゴンナルド沸石→ワイラケ沸石→灰長石。[Chabazite-SiO2-H2O系]:輝沸石→モルデン沸石→ワイラケ沸石+石英。輝沸石の生成温度領域は高圧側程広くなる傾向を示す。輝沸石・モルデン沸石は過剰シリカの存在下で生成が促進され,とくにモルデン沸石はその影響が大である。輝沸石とモルデン沸石の生成領域を比較した場合,低温・高圧側に輝沸石,高温・低圧側にモルデン沸石の領域が示される。