岩石鉱物鉱床学会誌
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西中国地域の白亜紀~古第三紀火山岩中のFe-Ti酸化鉱物
とくにイルメナイト中のMn含有量について
今岡 照喜中島 和夫村上 允英
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1982 年 77 巻 7 号 p. 235-255

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抄録

西中国地域の白亜紀~古第三紀火山岩中のFe-Ti酸化鉱物の産状及び化学組成について検討した。標題地域の火山岩層は下位より白亜紀の関門・周南・匹見・阿武層群及び古第三紀の田万川層群に区分される。このうち関門・田万州層群火山岩中には磁鉄鉱が卓越し,玄武岩質安山岩中よりクロムスピネルが見出された。一方,匹見・阿武層群火山岩中には磁鉄鉱はほとんど含まれない。周南層群火山岩中には,磁鉄鉱の卓越するものと全く欠くものの両者が共存する。全岩の帯磁率の測定結果も磁鉄鉱含有量の差をよく反映している。
イルメナイトは玄武岩質安山岩の一部を除くほとんど全ての火山岩中に含まれる。特にそのMn含有量は産状により,また層群間で著しく変化する。すなわち,イルメナイトの産状は1) independent type, 2) trellis type, 3) composite typeに区分されるが,このうち同一薄片内では1) より2) 及び3) にMnが濃集している。また層群間でのイルメナイト中のMn含有量の差異は,これら産状による差異をはるかに凌駕しており,FeTiO3-Fe2O3-MnTiO3図上で明瞭に識別できる。すなわち,古第三紀田万川層群火山岩中のイルメナイトは最もMnTiO3,Fe2O3成分に富み,関門・匹見・阿武層群中のものは乏しい。周南層群中のものはその中間を示す。全体として白亜紀より古第三紀火山岩中のイルメナイトの方がMnTiO3, Fe2O3成分に富む。深成岩中のイルメナイトについても同様の時代的差異が認められる。
イルメナイト中のMn/Fe比は温度・マグマ中のMn/Fe比, fo2などに支配されるが,古第三紀火山岩・深成岩における高Mn/Fe比は高いfo2に起因しているものと推定される。

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