表記地域の花崗岩類(一部斑〓岩類を含む)は赤金鉱山岩株を除き磁鉄鉱系に属するが,それらの硫黄含有量 (10~1,000 ppm S) は一般に苦鉄質岩石で高く,珪長質岩石で低い傾向を示す。硫黄含有量は詳細には,カルクアルカリ岩系バソリスと岩株,アルカリ岩系岩株,鉱化小岩株(とくにチタン鉄鉱系)の順に高い。硫黄含有量が30 ppm以下の場合には硫化物は一般に認められず,これ以上の岩石では磁鉄鉱系で黄鉄鉱,黄銅鉱,少量の磁硫鉄鉱が主たる硫化物である。ごくまれに硫砒鉄鉱,輝水鉛鉱,その他が認められる。これらの硫化物の一部はサブソリダス反応により生じた可能性があるが,分祈試料が新鮮であることから硫黄含有量は原マグマの溶存硫黄含有量とみなしてよいものと思われる。その量は一般のカルクアルカリ岩で40 ppm S 程度に低く,アルカリ岩系ではその5倍以下の程度に高い。チタン鉄鉱系の赤金鉱山岩株では硫黄が磁硫鉄鉱>黄銅鉱として濃集しており(平均 628 ppm),溶存硫黄量が最も多かったものと思われる。周辺のスカルン鉱床は貫入岩と同様な硫化物鉱物種と鉱物種を持っており,鉱床の S, Cu などはマグマ起源であることを示唆する。