1988 年 83 巻 9 号 p. 388-399
日高変成帯ニカンベッかんらん岩体中に細粒の角閃岩捕獲岩を見出した。角閃岩はガブロの薄層に囲まれて,かんらん岩体の層構造を切るように捕獲されている。角閃岩はケルスート閃石-パーガス閃石+斜長石+イルメナイト,ガブロは単斜輝石+ケルスート閃石-パ-ガス閃石+斜長石+イルメナイトを主とする。両岩石は全岩化学組成が極めて似ている。REEパターンも両者で似ているが,ガブロの方がよりREEに富んでいる。これらの検討から,角閃岩はかんらん岩体に捕獲された時その縁が全溶融し,REEは捕獲岩の核部から移動したと考えた。ガブロとかんらん岩の間には顕著な拡散層があり,かんらん岩体中には約10mmの深さまでFe, Mgの拡散が認められる.拡散係数を用いて900°Cでの力熱時間を推定すると,約0.2 Myとなる。この結果は,熱いがんらん岩体の迸入によって,日高変成帯の下部が溶融したことを暗示する。