岩鉱
Online ISSN : 1881-3275
Print ISSN : 0914-9783
ISSN-L : 0914-9783
奥尻島に産する白亜紀~第三紀火山岩類のSr同位体比の経年変化
周藤 賢治加々美 寛雄山本 和広
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 87 巻 5 号 p. 165-173

詳細
抄録

奥尻島に産する白亜紀~第三紀の火山岩類のSr同位体比を測定し,その結果に基づきこれらの火山岩類の起源物質の性質の経年変化を検討した。火山岩類の87Sr/86Sr初生値 (SrI値) は以下の通り。白亜紀火山岩類: 0.70532, 漸新世松江玄武岩(下部): 0.70344-0.70346, 松江玄武岩(上部): 0.70378-0.70419, 前期中新世安山岩(青苗川層): 0.70448-0.70475, 前期中新世安山岩(釣懸層): 0.70432-0.70442, 中期中新世ドレライト: 0.70325, 鮮新世火山岩類: 0.70294-0.70331。 このうち上部松江玄武岩のSrI値の大きな変異幅は,奥尻島の白亜紀花崗岩類の汚染作用によって説明され,汚染作用を受ける前の上部松江玄武岩のSrI値は0.7037前後の値と見積もられる。中期中新世以降の低いSrI値をもつ火山岩を形成したマグマの起源は,日本海拡大に伴い,背弧側に貫入したとみられるアセノスフェアに求めることができ,前期中新世以前のSrI値の高い火山岩の起源は大陸性マントルから生成されたマグマに求めることができるが,上記アセノスフェア起源のマグマ(松江玄武岩)は漸新世にも活動したものとみられる。

著者関連情報
© 日本鉱物科学会
次の記事
feedback
Top