GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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PROBLEMS AND PROSPECTS OF TREATMENT FOR PREVENTION OF STENOSIS AFTER ENDOSCOPIC SUBMUCOSAL DISSECTION OF SUPERFICIAL ESOPHAGEAL CANCER - FACTORS ASSOCIATED WITH RESISTANCE TO STENOSIS PREVENTION TREATMENT, AND USEFULNESS OF STEROID ORAL + LOCAL INJECTION COMBINATION THERAPY
Naoyuki YAMAGUCHI Kazuhiko NAKAOSusumu EGUCHIHajime ISOMOTO
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2017 Volume 59 Issue 10 Pages 2535-2545

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要旨

食道ESDは2008年に保険収載となり,難易度がやや高いものの低侵襲・高い根治性により全国的に広く普及してきている.

一方で,3/4周以上の広範囲剥離症例では術後狭窄が高頻度に起こり,頻回の拡張術が必要となるため,患者や医療経済上の負担が大きいことが問題となっており,その克服が食道ESD普及の最大の課題となっている.

このような広範囲剥離症例に対しわれわれは,ステロイド投与,細胞シート移植療法により有意に狭窄率を低減可能であることを報告してきた.

そこで今回,ステロイド経口投与・局注療法の有用性とその限界,さらに,それら狭窄予防治療抵抗性症例に対するステロイド経口+局注併用療法の有用性を検討した.

【本項のポイント】食道ESD後狭窄予防にSH投与,細胞シート移植はいずれも有用であるが,1.切除範囲:9/10周以上,2.切除長軸径:5cm以上,3.頸部食道,4.CRT/ER治療歴のうち2因子以上を満たす症例は,狭窄予防治療抵抗性症例であった.

そのような治療抵抗性症例に対してSH経口+局注併用療法が有用である.

Ⅰ はじめに

食道癌は2015年には本邦で約23,900人が罹患し,年間死亡者数は11,400人で,全悪性新生物死の約3.1%を占めると国立がん研究センターでは推計している.特に男性における死亡数順位は肺癌,胃癌,大腸癌,肝臓癌,膵癌に次ぐ第6位となっている 1

また,従来,食道癌は早期発見が比較的難しく,進行癌が全体の約65%を占め,その予後は不良であった.

しかし近年,内視鏡画像の高解像度化やNarrow Band Imaging(NBI),Blue Laser Imaging(BLI),Linked Color Imaging(LCI)などの画像強調観察などの内視鏡機器の飛躍的進歩によって,効率的に表在癌の拾い上げが可能となってきた.

さらに,食道上皮性腫瘍に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection(ESD))が2008年4月より保険収載され,早期に発見できれば広範囲病変であっても一括切除が可能となり,内視鏡治療にて根治可能となってきている 2),3

その一方で,3/4周以上の広範囲剥離例では術後狭窄が高頻度に起こり頻回の拡張術が必要となるため 4,患者や医療経済上の負担が大きいことが問題となっている.

このため2007年4月版の食道癌診断・治療ガイドラインでは,絶対的適応としてEP/LPM症例で,周在性が2/3周以下との制限が設けられていた 5

しかし近年,術後狭窄に対してステロイド(steroid hormones:SH)局注療法 6)~11やSH経口投与 12)~14,口腔粘膜上皮細胞シート移植 15)~20,PGAフェルト+フィブリン糊被覆法 21,生体吸収型ステント 22などが有用であるとの様々な報告がなされるようになってきている.

これら狭窄予防の様々な取り組みから,2012年4月版の食道癌診断・治療ガイドラインでは,十分な術前説明と狭窄予防が必要であるが,周在性についての制限が緩和されるに至っている 23.さらに,2017年発刊された食道癌診療ガイドラインでは,食道癌の内視鏡治療後の狭窄予防として,予防的バルーン拡張術,ステロイド局注,ステロイド内服のいずれかを行うことを強く推奨する(合意率90%,エビデンスの強さA)と掲載されている.

しかしながら,そのような様々な狭窄予防対策を行っても,全周切除症例などに対しては未だ十分な狭窄予防対策を成し得るには至っていない現状も存在する.

そこで本稿では,当科で施行した食道ESD症例を対象に術後狭窄予防対策として行ったステロイド経口投与,ステロイド局注療法,ステロイド経口+局注併用療法の有用性を検討し,食道ESD後狭窄対策の現状と限界及び今後の展望を概説する.

Ⅱ 治療成績

当科で2006年4月~2016年7月の間にESDを施行した食道上皮性腫瘍633病変の治療成績は,一括治癒切除率:90.7%,一括完全切除率:96.2%,一括切除率:99.8%であった(Table 1).

Table 1 

治療成績.

偶発症に関しては,穿孔率0%,後出血率0.8%と低率であったが,術後狭窄率は後述する様々な狭窄対策を行っているにもかかわらず,全体で6.3%と高率であった(Table 2).

Table 2 

偶発症.

上記の如く,食道ESDによってEMR時代と比べて全周性の広範囲病変に対しても一括切除が可能となり(電子動画1),非常に良好な治療成績が得られるようになった.その一方で,3/4周以上の広範囲切除を行うと高率に術後狭窄が起こる4ことが分かっており,この術後狭窄の克服が食道ESDの最大の課題と思われる.

○症例提示(VTR提示)

【症例1】食道表在癌(全周性病変),55歳・男性,食道扁平上皮癌(0-Ⅱc)(電子動画1).

胸部中部~下部食道に全周性のⅡc型食道表在癌を認め,全周ESDを施行した(病変径:68×60mm,切除径:68×60mm).病理組織結果はsquamous cell carcinoma,MM,ly0,v0,LM(-),VM(-)であり,一括治癒切除であった.

Ⅲ 術後狭窄対策

そこで,食道ESD症例を対象に,術後狭窄に対するSH経口投与,SH局注療法,ステロイド経口+局注併用療法の有用性を検討した.

対象は観察期間3カ月以上で3/4周以上の広範囲剥離を行った食道ESD症例のうち,SH投与を行った211病変とした.その内訳はSH経口投与群(以下,経口群)94例,SH局注群(以下,局注群)91例,SH経口+局注併用群(以下,併用群)26例となっている(Table 3).

Table 3 

対象.

○SH投与方法

SH経口群では,全周剥離症例は術後2日目よりプレドニゾロンを0.5mg/kg/日(30mg/日)より開始,漸減しながら18週間経口投与,3/4周以上全周未満症例は同様の量で6~12週間経口投与を行った(Figure 1).

Figure 1 

ステロイド経口投与方法.

また,SH内服中は感染症(肺結核・ニューモシスティスカリニ肺炎)予防のため,SH投与開始2~4週後よりイソニアジド,スルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST合剤)をSH内服終了まで予防投与している.

SH局注群(トリアムシノロンアセトアニドトリアムシノロン)では,ESD終了直後にトリアムシノロン40~120mgを20~60カ所に分け1回局注し終了とした.その局注量は切除長軸径が3cm未満のものは40mg,3cm以上のものは80mg,後述するステロイド抵抗性因子2因子以上のものは120mgとした(Figure 2).

Figure 2 

ステロイド局注方法.

トリアムシノロン局注はステロイドの筋層内注入に伴う筋層の脆弱性の惹起とそれに伴う後穿孔,また,狭窄後の拡張術時の高い穿孔率が問題となることがある.トリアムシノロンは懸濁性ステロイドのため,筋層内注入になってしまうと3週間以上組織内にとどまり,水溶性ステロイドであるベタメタゾン等と比較し,後穿孔のリスクが高くなるとされている.

そこでわれわれは(株)トップ社と共に安全な局注のための針の開発を行い,2012年11月より(株)トップから局注針Nタイプとして全国発売されている(Figure 2).この局注針は25G・突出長1.8mmの鈍針となっており,筋層内注入のリスクを低減し,(電子動画2:内視鏡用穿刺針 Nタイプ(VTR提示).)で提示しているようにスタンプを押すような感覚でESD後の薄い残存粘膜下層に安全に局注することが可能なようにデザインされている.当科では2011年より本針を用いてSH局注を行っており,局注に伴う後穿孔などの合併症は経験していない.

拡張術追加基準は,自覚症状を認め,径9~10mmのスコープが通過しない場合とした.また,SH局注群では必要に応じて追加局注を行った.

統計解析としては,χ2乗検定とMann-Whitney検定を行った.χ2乗検定で期待値が5以下の場合はFisherの直接確率法を用い,Mann-Whitney検定では中央値で検討した.

(1)術後狭窄に対するSH経口群・SH局注群の有用性の検討

経口群94例,局注群91例におけるESD後術後狭窄予防効果の比較検討を行った(Table 4).

Table 4 

経口群vs局注群の比較検討.

2群とも拡張回数・拡張期間の中央値は0回・0日で,有意差を認めなかった.狭窄率は,経口群14.9%(14/94),局注群13.2%(12/91)で有意差を認めなかった.

重篤な有害事象に関しては,局注群では1例も認めなかったが,経口群で1.1%(1/94)に重症サイトメガロウイルス腸炎を発症しており,経口群においては重症感染症などに十分留意する必要があると思われた.

これらの結果は,他報告においても 8)~11,狭窄率(全周症例含む)はトリアムシノロン局注療法において平均14.1%(10/71)(0~30.8%)であり,当院とほぼ同様の結果であった.

○症例提示

【症例2】SH経口群(7/8周切除),64歳・男性,食道扁平上皮癌(0-Ⅱc)(Figure 3).

Figure 3 

[症例2]SH経口群,64歳・男性,食道扁平上皮癌(0-Ⅱc)の内視鏡像.

a:胸部食道の色素内視鏡像(ルゴール散布).

b:胸部食道の色素内視鏡像(ルゴール散布近接).

c:ESD後切除標本.

d:ESD後潰瘍(ESD終了時).

e:ESD後潰瘍(1週間後).

 f:ESD後潰瘍瘢痕(8週間後).

胸部下部食道に2つのⅡc型食道表在癌を認め(Figure 3-a,b),まとめてESDにて一括切除した(Figure 3-c).病変径:42×25mm・15×13mm,切除径:70×50mmで7/8周切除となった(Figure 3-d).病理組織結果はsquamous cell carcinoma,MM,ly0,v0,LM(-),VM(-)であり,一括治癒切除であった.

本症例は,SH経口投与を7週間行い,拡張術を必要とせず,8週間後に狭窄なく治癒している(Figure 3-e,f).

【症例3】SH局注群(7/8周切除),63歳・男性,食道扁平上皮癌(0-Ⅱc)(Figure 4).

Figure 4 

[症例2]SH局注群,63歳・男性,食道扁平上皮癌(0-Ⅱc)の内視鏡像.

a:胸部食道の色素内視鏡像(ルゴール散布).

b:ESD後切除標本.

c:ESD後潰瘍(ESD終了時).

d:ESD後潰瘍(ESD終了時).

e:ESD後潰瘍(2週間後).

 f:ESD後潰瘍瘢痕(8週間後).

胸部下部食道に2/3周のⅡc型食道表在癌を認める(Figure 4-a).ESDを行い,切除長軸径50mm,7/8周切除(病変径:35×30mm,切除径:50×42mm)(Figure 4-b)となった.病理組織結果はsquamous cell carcinoma,MM,ly0,v0,LM(-),VM(-)であり,一括治癒切除であった.

本症例はESD終了直後にトリアムシノロン計80mgを40カ所に分け局注し(Figure 4-c,d),拡張術を必要とせず,8週間後に狭窄なく治癒している(Figure 4-e:2週間後,Figure 4-f:8週間後).

(2)狭窄予防治療(SH経口投与・局注療法)抵抗性因子の検討

Table 4に示す通り,SH経口,局注群いずれも拡張回数・拡張期間の中央値は0回・0日で,狭窄率においても経口群14.9%(14/94),局注群13.2%(12/91)で,良好な狭窄予防効果を示した.

しかし,自験例2群全体において26例(14.1%)の狭窄症例を認めており,その狭窄症例の特徴および解析を行ったところ,①切除範囲9/10周以上,②切除長軸径50mm以上,③頸部食道,④CRT・内視鏡切除(endoscopic resection:ER)治療歴の4因子が狭窄予防治療抵抗性因子であった(Table 5).

Table 5 

狭窄予防治療抵抗性因子.

そこで,この治療抵抗性因子数別に狭窄率を検討した(Table 6).

Table 6 

狭窄予防治療抵抗性因子数別の狭窄率.

亜全周で2因子未満の症例では狭窄率3.9%(5/127)であるのに対し,亜全周・2因子以上では30.0%(9/30),全周剥離症例では42.9%(12/28)と有意に(p<0.0001)狭窄率が高いという結果であり,亜全周・2因子以上及び全周症例が狭窄予防治療抵抗性症例と考えられた.

そこでさらなる狭窄対策が必要と考え,狭窄予防治療抵抗性症例(亜全周・2因子以上または全周症例)に対し,SH経口+局注併用療法を試みた.

(3)狭窄予防治療抵抗性症例に対するSH経口+局注併用療法の有用性

○SH経口+局注併用療法の方法

Figure 5で示す如く,亜全周2因子以上症例に対しては,ESD終了直後にトリアムシノロン160mg(120~200mg)を局注し,術後2日目よりプレドニゾロンを12週間経口投与した.また,全周剥離症例に対しては,ESD終了直後にトリアムシノロン200mg(160~240mg)を局注し,術後2日目よりプレドニゾロンを18週間経口投与した.

Figure 5 

ステロイド経口+局注併用方法.

経口投与の投与法に関しては,12週間経口投与の場合は30mg・25mgを3週間ずつ,20mg・15mgを2週間ずつ,10mg・5mgを1週間ずつの計12週間の投与,18週経口投与の場合は30mg・25mgを4週間ずつ,20mg・15mgを3週間ずつ,10mg・5mgを2週間ずつの計18週間の投与としている.

○症例提示(VTR提示)

【症例4】SH経口+局注併用群(全周症例)①治癒過程,55歳・男性,食道扁平上皮癌(0-Ⅱc)(電子動画3).

胸部中部食道から下部食道にかけて全周性のⅡc型食道表在癌を認め,全周剥離を行った.切除長軸径:70mm・全周切除(病変径:60×68mm 切除径:70×68mm)となった.病理組織結果はsquamous cell carcinoma,LPM,ly0,v0,LM(-),VM(-)であり,一括治癒切除であった.本症例は,SH経口18週間+ケナコルト局注180mg併用療法を施行し,この併用療法により拡張術を必要とせず,18週間後,狭窄なく治癒している.

【症例5】SH経口+局注併用群(全周症例)②治癒過程,74歳・男性,食道扁平上皮癌(0-Ⅱc)(電子動画4).

胸部中部食道にほぼ全周性のⅡc型食道表在癌を認め,全周剥離を行った.切除長軸径:60mm・全周切除(病変径:64×52mm 切除径:64×60mm)となった.本症例は,SH経口18週間+ケナコルト局注180mg併用療法を施行し,この併用療法により拡張術を必要とせず,18週間後,狭窄なく治癒している.病理組織結果はsquamous cell carcinoma,MM,ly1,v0,LM(-),VM(-)であり,一括完全切除であったが,リンパ管侵襲を認め,非治癒切除であったため,狭窄予防治療終了後に追加化学放射線療法施行し,16カ月後の現在,無再発生存中である.

【症例6】SH経口+局注併用群(全周症例)③治癒過程,80歳・男性,食道扁平上皮癌(0-Ⅱc)(電子動画5).

胸部下部食道に全周性のⅡc型食道表在癌を認め,全周剥離を行った.切除長軸径:55mm・全周切除(病変径:59×37mm 切除径:59×55mm)となった.病理組織結果はsquamous cell carcinoma,MM,ly0,v0,LM(-),VM(-)であり,一括治癒切除であった.本症例は,SH経口18週間+ケナコルト局注180mg併用療法を施行し,この併用療法により拡張術を必要とせず,20週間後,狭窄なく治癒している.

(4)SH経口+局注併用療法の有用性

併用群の狭窄率は,亜全周・2因子以上で10.0%(1/10),全周で18.8%(3/16)であり,その他2群(経口群,局注群)の亜全周・2因子以上:30.0%,全周:42.9%と比較し有意に(p<0.05)低値であった(Table 7).

Table 7 

SH経口+局注併用群の狭窄率.

(5)ESD後狭窄に対する治療選択

Figure 6にESD後狭窄に対する治療選択を示す.

Figure 6 

ESD後狭窄に対する治療選択.

亜全周症例では前述の狭窄予防治療抵抗性因子4因子のうち0~1因子の症例はSH経口投与7~8週間またはトリアムシノロン局注40~80mg,2因子以上の症例は経口12週間+局注160mg(120~200mg)併用療法が適当と思われる.

また,全周剥離症例は経口18週間+局注200mg(160~240mg)併用療法が適当と思われる.

Ⅳ おわりに

食道癌の早期発見はNBIやBLIなどに代表される特殊光観察などの内視鏡機器の飛躍的進歩によって新しい時代を迎えた.

早期に発見できれば,食道癌であっても,ESDに代表される低侵襲な内視鏡治療によって根治可能となってきている.

また,SH経口投与や局注療法,細胞シート移植は良好な狭窄予防効果を認め,患者のQOLを改善することが可能であり,ESD後狭窄予防に有用な治療法である.

しかし,現時点では,それらの狭窄予防治療にも,限界があるのも事実である.

今回,それら狭窄予防治療抵抗性症例に対してもSH経口+局注併用療法が有用である可能性が示唆された.

しかし,未だ単施設・少数例の検討であり,今後さらなる症例集積を行い,多施設・多数例における有効性・安全性を含め検討する必要があるものと考えている.

謝 辞

本研究を進めるにあたり,多大な御協力を頂いた長崎大学病院 消化器内科 福田浩子先生,南ひとみ先生,松島加代子先生,赤澤祐子先生,大仁田賢先生,竹島史直先生,宿輪三郎先生に深く感謝申し上げます.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:磯本 一(EAファーマ,武田薬品,アストラゼネカ,第一三共)

文 献
 
© 2017 Japan Gastroenterological Endoscopy Society
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