GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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A CASE OF FOCAL ADENOCARCINOMA IN TUBULAR ADENOMA ON ADENOMYOMATOSIS OF THE GALLBLADDER DETECTED WITH ACUTE PANCREATITIS AND CHOLANGITIS
Toshiyuki WAKATSUKI Takeshi HISANoriaki GIBOTakehiro SHIMIZUTamaki MOMOIHideki HUKUSHIMAMasayuki HURUTAKESatoshi SHIOZAWA
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2017 Volume 59 Issue 7 Pages 1499-1506

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要旨

症例は84歳,女性.上腹部痛,嘔吐にて来院し,急性胆管炎,膵炎と診断され保存的加療にて改善した.精査で胆嚢底部の腺筋腫上に無茎性隆起を認め,胆嚢癌の診断で手術を施行した.病理学的には限局型腺筋腫症の直上に幽門腺型管状腺腫が存在し,その頂部に腺癌を認めた.背景粘膜に過形成や慢性炎症はなく,幽門腺化生が散在し,腺筋腫症と癌の関連を示唆する所見は認められなかった.画像,病理所見から,急性胆管炎,膵炎の原因として,結石や腫瘍に伴う血腫・粘液は否定的であり,腫瘍脱落による腫瘍片の乳頭部通過の可能性が考えられた.超音波像において高エコー層の菲薄化と判断した部位は,腺腫のRAS内進展部を反映していたと思われた.

Ⅰ 緒  言

胆嚢腺筋腫症(adenomyomatosis of the gallbladder;ADM)は,Rokitansky-Aschoff sinus(RAS)の増生・拡張,粘膜の過形成,固有筋層の肥厚を呈する良性疾患であり,基本的に経過観察が選択される.しかし,稀ながら胆嚢癌との合併の報告がみられ,その見極めが重要である.

今回,われわれは急性胆管炎,膵炎を契機に発見された胆嚢腺腫内癌を経験した.腫瘍は限局型ADM上に存在し,腫瘍基部は無茎性であった.本症例の発見契機,画像所見が興味深く,文献的考察を加え報告する.

Ⅱ 症  例

患者:84歳,女性.

主訴:上腹部痛および嘔吐.

既往歴:特記事項なし.

現病歴:朝食摂取後から上腹部痛,嘔吐が出現したため当院に救急搬送された.

現症:上腹部に圧痛を認めた.

来院時血液生化学所見:異常値を以下に示す.白血球数15,200/μl(4,000-9,000),総ビリルビン1.5mg/dl(0.3-1.3),AST 2,138IU/l(11-40),ALT 556IU/l(7-45),LDH 1,567IU/l(120-235),Alp 578IU/l(100-355),アミラーゼ1,278IU/l(43-116),CRP 0.58mg/dl(≦0.3),Ca 8.4mg/dl(8.5-10.5)であった.γ-GTPは測定されなかった.

来院時造影CT所見:膵全体の腫大および周囲脂肪組織の濃度上昇を認めた.膵外への炎症は右前腎傍腔,結腸間膜根部に進展していた.肝内・肝外胆管,胆嚢,胆嚢管は軽度拡張していたが,明らかな狭窄や結石は認められなかった.また,胆道内に出血を示唆する高吸収域もみられなかった.一方,胆嚢底部に造影効果を有する腫瘤を指摘された.

入院後経過:中等症の急性胆管炎・膵炎と診断し,絶食,補液,抗生剤投与を行った.症状は徐々に改善傾向となり,胆嚢腫瘤に対する各種画像検査を追加施行した.

US所見:胆嚢底部に径13mm,表面不整,内部に比較的均一な無茎性等エコー隆起を認め,隆起基部に類円形無エコー域を伴っていた.

EUS所見:胆嚢底部に内側低エコー層の限局性肥厚を認め,内部に多数の無エコー域を伴い,限局型ADMと診断した.ADM上に表面不整な無茎性等エコー隆起を認め,隆起基部の一部で外側高エコー層の菲薄化が疑われた(Figure 1).また,水平面を形成するデブリ様エコーを認めた.一方,胆管内にデブリエコーや結石はなく,膵・胆管合流異常は認められなかった.

Figure 1 

超音波内視鏡画像.

十二指腸球部での押し込み走査では,胆嚢底部に内側低エコー層の限局性肥厚を認め,内部に多数の無エコー域を伴い(矢頭),限局型ADMと診断した.ADM上に表面不整な無茎性の等エコー隆起を認め,隆起基部の一部で外側高エコー層の菲薄化が疑われた(矢印).

CT所見:胆嚢底部の隆起は,単純で胆汁よりもやや高吸収を呈し,造影早期より濃染し,後期相まで造影効果が持続した(Figure 2).隆起基部の嚢胞状構造は不明瞭であった.

Figure 2 

造影CT画像.

胆嚢底部の隆起は,造影早期より濃染し,後期まで造影効果が持続した(矢印).

MRI所見:脂肪抑制T2強調画像では,胆嚢底部隆起は淡い高信号を呈し,基部の壁内に複数の嚢胞状構造を認めた(Figure 3).造影では,CTと同様に隆起は早期相で濃染し,後期相まで造影効果が持続していた.拡散強調画像では,胆嚢底部隆起付近に高信号を認めた.一方,胆嚢および胆管内胆汁はT1強調画像で均一な低信号,T2強調画像で均一な高信号を呈し,出血は否定的と考えられた.

Figure 3 

脂肪抑制T2強調画像.

胆嚢底部に不整隆起を認め,隆起基部に複数の嚢胞状構造を伴っていた(矢印).

以上より,限局型ADMに合併した胆嚢癌と診断した.EUSにて隆起基部の一部で外側高エコー層の菲薄化が疑われたことから深達度は漿膜下層と判断した.年齢を考慮して肝床部切除術を行った.

切除直後の胆嚢内所見:結石,出血,腫瘍片および粘調な粘液は認められなかった.

固定切除標本所見(Figure 4):胆嚢底部に16×10mmのやや褪色調の無茎性隆起を認めた.

Figure 4 

固定切除標本とマッピング.

胆嚢底部に16×10mmのやや褪色調の無茎性隆起を認め,ADM上に存在する腺腫内癌であった.また,ADMの一部に腺腫のRAS内進展を認めた.

病理組織所見(Figure 5):背景胆嚢粘膜には過形成や慢性炎症はなく,幽門腺化生が散在していた.隆起直下とその近傍に限局した固有筋層の肥厚,RASの増生・拡張を認め,限局型ADMと診断した.隆起の大部分は淡明な胞体を有する幽門腺類似腺管の密な増殖から成っていた.核は軽度異型を呈していたが,基底側に配列していた.低異型度管状腺腫と診断され,腺腫内の異型度は均一であった.隆起頂部には,周囲の低異型度管状腺腫と比較して,腺管密度が上昇した領域を認めた.同部では,間質が消失し,核分裂像や大小不同を伴う異型核の極性消失が認められ,高分化型管状腺癌と診断された(Figure 5-b).一方,隆起直下の漿膜下層内に拡張した管腔を認め,その上皮は周囲の幽門腺化生部と比較して核腫大を伴う細胞異型および細胞密度上昇を示し,低異型度管状腺腫部と同様の組織像であった.その周囲に拡張したRASが多発しており,腺腫のRAS内進展と判断された(Figure 5-a).

Figure 5 

病理組織像(Figure 4の点線Aの切片).

a:ルーペ像.Figure 4の点線Aの切片では,無茎性隆起の直下の壁は限局性に肥厚し,同部では固有筋層の肥厚,RASの増生・拡張を認めた.矢印部は腺腫のRAS内進展部である(HE染色,×1).

b:無茎性隆起部の拡大像.右は,軽度異型核が基底層に配列する幽門腺類似の腺管で,低異型度管状腺腫と診断した.左は,低異型度腺腫と比較して,腺管密度が上昇,間質が消失し,核分裂像や大小不同を伴う異型核の極性消失を認め,高分化型管状腺癌と診断した(HE染色,×20).

c:Alcian blue・PAS染色.腫瘍の細胞質内に陽性を示す粘液を認めた(×20).

Alcian blue・PAS染色では,腫瘍の細胞質内に陽性を示す粘液を認めた(Figure 5-c).免疫組織化学的検討では,腺腫部分はMUC5,MUC6で陽性,MUC2で陰性を示し,胃幽門腺型と診断された.なお,癌,腺腫ともにKi-67,p-53は陰性であった.

以上より,限局型ADM上の腺腫内癌(Gallbladder carcinoma in adenoma,Gf,16×10mm,tub1,pT1a(m),ly0,v0,ne0,pN0,CM0,EM0,PVX,AX,R0,stage Ⅰ)と診断した.

Ⅲ 考  察

胆嚢腺腫は,増殖様式から管状,乳頭状(絨毛状),混合型に,また化生の見地から胃幽門腺型,腸型,胃小窩型,胆道型に分類される 1)~3.一般に幽門腺型の管状腺腫が大部分を占め,その多くは有茎性である 4)~6.本症例は無茎性の胆嚢腺腫内癌であり,胆嚢腺腫報告例を基部形態別に検討した.「胆嚢」「腺腫」「gallbladder」「adenoma」をキーワードにPubMedと医学中央雑誌で1984年1月~2016年10月まで検索したところ,基部形態が記述されている胆嚢腺腫は57論文269病変であった(同施設の重複例を除く)(Table 1).基部形態を有茎と無茎に分類した場合,有茎185病変(68.8%),無茎84病変(31.2%)で,無茎が約1/3を占めた 7)~19.詳細な組織学的記載のないものが多いが,無茎では乳頭状(絨毛状)腺腫の占める割合が比較的高かった(有茎4.9%,無茎13.1%).腺腫内癌は有茎42病変(22.7%),無茎14病変(16.7%)に認められた.ADM合併は有茎2病変,無茎1病変で,ともに約1%であった.今後,基部を含めた肉眼形態や組織像に着目した症例の蓄積,検討によりそれらの関係性が明らかになると思われる.

Table 1 

基部形態からみた胆嚢腺腫269病変の集計.

無茎性腺腫と癌の鑑別において,胆嚢壁血流速度の有用性を示唆する症例報告 17があるが,腺腫内癌と癌の鑑別や腺腫併存癌での検討はない.また,有茎性の胆嚢腺腫および腺腫内癌の少数例の検討 6では,超音波像,CTでの造影効果,MRIでの信号強度に明らかな差異は認められなかった.本症例では超音波による血流速度測定を行っておらず,また癌部分と腺腫部分の間にUS,EUSのエコーパターンやCT,MRIの造影効果の差異は認められなかった.画像診断において無茎性の腺腫,腺腫内癌,癌を鑑別することは術式選択に影響を与える可能性があり,今後多数例での検討が待たれる.

ADMが胆嚢癌の危険因子であるかについて結論は出ていない.胆嚢癌手術症例におけるADM合併が12~26% 20)~22と比較的高頻度の報告がある一方で,ADM経過観察中の発癌の報告はまれである 20),23)~27.「胆嚢」「腺筋腫症」「腺筋症」「癌」「gallbladder」「adenomyomatosis」「carcinoma」をキーワードに,PubMedと医学中央雑誌で1984年1月~2016年10月まで検索したところ,ADM合併胆嚢癌は40論文74例であった(Table 2).ADMの形態を限局型(底部型),分節型,びまん型に3分類すると,限局型(底部型)24例,分節型36例,分節型+限局型(底部型)2例,びまん型2例,不明10例であった.ADMと癌の位置関係をみると,限局型ではADM上が多く(15/24例:62.5%),分節型ではくびれを含めその底部側が大部分を占めた(28/36例:77.8%).T分類では上皮内癌および固有筋層までの浸潤癌は27例(36.5%)であった.腺腫が2例(2.7%)に併存していた.膵液胆道逆流現象を4例に認め,うち2例は膵・胆管合流異常,1例は膵胆管高位合流であった 28.他の1例は画像的に膵・胆管合流異常や高位合流はなく,摘出胆嚢内胆汁アミラーゼ高値より潜在的膵液胆道逆流と診断された 29.術前画像検査で癌に相当する隆起や壁肥厚を指摘しえたものは40例(54.1%)であった.一方,術前に癌の指摘が困難であったものは34例(45.9%)であり,それらの大部分は肉眼的に視認できない微小癌や上皮内癌,あるいはADMによる肥厚した壁内に散在する癌であった.ADMの経過観察中,あるいは他疾患などで定期的画像検査中に癌と診断された症例は20例で,その大部分が新たな隆起や壁肥厚の出現が発見契機となっていた.一般にADMは経過観察されるため,ADM合併癌の早期診断には前回画像との比較から微小な変化を拾い上げることが重要と思われる.

Table 2 

ADM合併胆嚢癌74例の集計.

ADM自体からの発癌機序は未だ不明であるが,発癌リスクを上昇させうる膵液胆道逆流の関与も考慮する必要がある 28),29.本症例では,背景胆嚢粘膜に過形成性変化や慢性炎症はなく,幽門腺化生が散在し,幽門腺型管状腺腫の頂部にのみ管状腺癌を認めた.発癌の背景として,膵液胆道逆流やADMとの強い関連を示唆する所見を認めなかった.

本症例は急性胆管炎・膵炎が発見契機となった.胆管炎,膵炎の同時発症の原因として,日常臨床では結石の乳頭部閉塞が多い.腫瘍関連では,腫瘍が産生する粘調な粘液 30),31,腫瘍出血による血腫 32,あるいは脱落した腫瘍片 33の乳頭部閉塞が推測されている.本症例における術前画像検査では結石や胆嚢腫瘍からの出血は否定的であり,また切除直後の胆嚢内に結石,出血,腫瘍片および肉眼的粘液は認められなかった.非常に粘調な粘液は超音波画像で描出され 30,それは持続的に産生されるため切除標本で肉眼的に視認可能である.よって,本症例では腫瘍細胞内に粘液を認めたものの,粘調な粘液を産生した根拠は乏しいと考えた.一方,胆嚢腺腫は自然脱落することが画像的に証明されており 34),35,腫瘍片は結石よりもやわらかいため乳頭部を通過することが予想される.本症例では,脱落した腫瘍片が拡張した胆嚢管を経て乳頭部を閉塞したために胆管炎・膵炎を発症し,その後腫瘍片が乳頭部を通過した可能性がある.

本症例において,EUS像と病理組織像の深達度診断の解離がみられた.胆嚢壁の超音波像の検討では,粘膜および固有筋層は内側低エコー層,漿膜下層は外側高エコー層として描出されるが,内側低エコー層内に漿膜下層浅層の一部が含まれることがある 36.よって,ADMの超音波像では,粘膜の過形成と固有筋層の肥厚を反映し,内側低エコー層が肥厚する.さらに,拡張RASは漿膜下層に存在するため,肥厚した内側低エコー層内あるいは内側低エコー層と外側高エコー層の間に小嚢胞が描出される 37.すなわち,拡張RASにより外側高エコー層が波状不整を呈することで菲薄化と捉えられることがある.本症例では,上述のようなADMの拡張RASによる外側高エコー層の菲薄化に加え,腺腫のRAS内進展部で腫瘍の丈が高いため,RAS内腔が狭小化し,無エコーではなく腫瘍部と等エコーを呈したことが,深達度診断の解離の原因と考えられた.

Ⅳ 結  論

本症例は胆嚢腺腫内癌であったが,無茎性かつ限局型ADM上に存在したため,腺腫併存の診断および深達度診断が困難であった.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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