GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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A CASE OF ENDOSCOPIC MUCOSAL RESECTION FOR ESOPHAGEAL METASTASIS OF CLEAR CELL RENAL CELL CARCINOMA
Ryo SHIMIZU Takahito TOBAShunsuke KOBAYASHIMasashi ONOYosuke OKAMOTORyusuke KIMURASota SADAMOTOMegumi WAKAYAMAKazutoshi SHIBUYAYoshinori IGARASHI
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2021 Volume 63 Issue 8 Pages 1495-1500

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要旨

症例は69歳,男性.2008年に左腎淡明細胞癌(pT1bN0M0 StageⅠ,Fuhrman grade:G2>G1)に対して左腎摘出術を施行した.2012年,2013年に縦隔リンパ節転移,肺転移それぞれに対して外科的切除を行い,その後,インターフェロン治療を継続していた.

2018年8月に急性胆嚢炎を発症し,胆嚢摘出術の術前精査で上部消化管内視鏡検査を施行した際,食道胃接合部直上に10mmのY-Ⅲ型発赤調隆起性病変を認めた.生検組織診断は転移性腎淡明細胞癌であった.腎細胞癌の孤発性転移巣に対する局所切除は有意に予後を改善させることが示されており,泌尿器科と協議の上,内視鏡的粘膜切除術を行った.転移性腎淡明細胞癌の内視鏡的治療の意義と有益性について報告する.

Ⅰ 緒  言

他臓器悪性腫瘍が血行性,リンパ行性に転移する転移性食道腫瘍は比較的稀であり 1,特に腎細胞癌の食道転移の報告例は少ない.

腎細胞癌は孤発性転移の場合,局所切除を行うことで生存期間の延長に寄与することが知られている 2.今回われわれは,腎淡明細胞癌の孤発性食道転移に対し内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection;EMR)を施行した1例を経験したので,文献的考察を加え転移性腎淡明細胞癌の内視鏡治療の意義と有益性について報告する.

Ⅱ 症  例

患者:69歳,男性.

主訴:食道腫瘍精査.

既往歴:45歳時,高血圧.59歳時,前立腺肥大症.65歳時,甲状腺機能低下症.

内服薬:セルトラリン,ミラベグロン,ペリンドプリル,レボチロキシン,アゼルニジピン.

現病歴:2008年に左腎淡明細胞癌(pT1bN0M0 StageⅠ,Fuhrman grade:G2>G1)に対して左腎摘出術を施行した.2012年,2013年に縦隔リンパ節転移,肺転移が認められ,それぞれに対して外科的切除を行い,その後インターフェロン治療を継続していた.2018年8月に急性胆嚢炎を発症し,保存的加療で経過良好であったが,再燃のリスクもあり胆嚢摘出を希望された.術前精査で施行した上部消化管内視鏡検査にて,食道胃接合部直上に約10mmの発赤調隆起性病変を認め生検を施行した.生検組織診断は転移性腎淡明細胞癌であり,泌尿器科より食道病変の精査目的で当科紹介となった.

現症:身長171cm,体重78kg,体温36.9度,脈拍63/分,整.血圧134/70mmHg.腹部平坦かつ軟.左側腹部に手術痕を認めるも,その他特記事項なし.

入院時血液検査所見:血算,生化学,腫瘍マーカーを含め特記すべき異常なし.

胸腹部CT画像検査:明らかな転移所見は認められなかった.

下部消化管内視鏡検査:今回は施行せず.

上部消化管内視鏡検査(Figure 1)では,白色光観察にて食道胃接合部直上に大きさ10mm程度の,山田Ⅲ型の表面平滑な発赤調隆起病変を認めた.生検病理組織所見は,上皮下に淡明な細胞質を有する腫瘍細胞が充実性に増殖しており,既往の左腎淡明細胞癌の病理組織所見と同様であったため,腎淡明細胞癌の食道転移と考えられた.内視鏡的治療適応の評価のため,NBI併用拡大内視鏡(magnifying endoscopy with narrow band imaging;ME-NBI)および超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasonography;EUS)(Figure 2-a~c)を施行した.観察時,病変頂部には白色付着物が認められ,可能な限り洗浄するも除去が困難であった.ME-NBIにて,観察範囲内ではあるが病変は茶色様の色調変化が認められ,表面は無構造であり,血管異型も認められなかった.EUSでは,病変内部はやや不均一であるが,比較的境界明瞭な高エコーの隆起病変として描出された.明らかな第3層の途絶は認められず,病変は粘膜内に限局したものと考えられ,泌尿器科との協議の上,EMRを施行した.

Figure 1 

上部消化管内視鏡検査.

食道胃接合部直上に大きさ10mm大の表面平滑な発赤調隆起性病変を認める(矢印).

Figure 2 

NBI併用拡大観察(ME-NBI),超音波内視鏡検査(EUS).

a:NBI観察.病変の大部分は白色付着物が認められ,観察範囲内では茶色の色調変化が認められた.

b:ME-NBI観察.病変内部の表面は無構造であり,血管異型も認められなかった.

c:EUS.病変は内部がやや不均一であるが,比較的境界明瞭な高エコーの隆起病変(矢印)として認識された.第3層の途絶は認められず,粘膜内を主座とする病変と考えられた(黄線).

切除された12×8×5mm大の亜有茎性病変は病理組織学的に,粘膜固有層を主座として淡明な細胞質を有する腫瘍細胞が,豊富な血管網の介在する充実性胞巣を形成して増殖していた(Figure 3-a,b).特徴的な形態像に加え,免疫組織化学的な検索にて腫瘍細胞はPAX-8とCD10が陽性であり,腎淡明細胞癌の転移と判断した.粘膜筋板を免疫組織化学で識別し,粘膜固有層内のみでの癌細胞の増殖を確認し,切除断端への腫瘍細胞の露呈はみられなかった(Figure 3-c,d).また,弾性繊維染色(EVG),免疫染色(D2-40)を併用したが明らかな脈管侵襲は確認できなかった.2020年7月現在,患者の生存を確認しており,上部消化管内視鏡検査でも明らかな再発は認められていない(Figure 4).

Figure 3 

病理組織学的所見.

a:淡明な細胞質を有する腫瘍細胞が,豊富な血管網の介在する充実性胞巣を形成して,増殖している(HE,×200).

b:腫瘍細胞の細胞膜にCD10陽性(CD10,×200).

c:切除断端への腫瘍細胞の露呈はみられない(HE,×40).

d:粘膜筋板を免疫組織化学で識別し,粘膜固有層内のみでの癌細胞の増殖を確認した(Desmin,×40).

Figure 4 

上部消化管内視鏡検査(2020/7).

明らかな再発所見は認められない(矢印).

Ⅲ 考  察

転移性食道腫瘍の頻度は,Mizobuchiら 3の報告によると,癌死した剖検例1,835例中,転移性食道腫瘍を112例(6.1%)で認め,その原発臓器は肺(11.1%),乳癌(7.4%),胃癌(4.0%)の順であったと報告しているが,その67.8%は肉眼的所見を認めず,顕微鏡的に転移が同定された症例であった.

今回,PubMedで1965年から2020年までの期間で「clear cell renal cell carcinoma」,「esophageal metastasis」,「endoscopic resection」をキーワードとして検索をしたところ,自験例を含めて6例の報告 4)~8であった(Table 1).自験例を除き,嚥下障害を主訴に受診されており,上部消化管内視鏡検査にて腫瘤性病変が認められている.Paddaらの報告での内視鏡所見については詳細不明ではあるが,原田ら 9が報告した腎細胞癌の胃転移症例は,自験例と類似した表面平滑なポリープ様形態を呈しており,腎淡明細胞癌他臓器転移の内視鏡所見の特異的な所見の1つの可能性がある.治療法は,患者の全身状態や病変径に応じて内視鏡的切除,外科的加療,化学放射線治療,対症療法とそれぞれ選択された.一般的に,他臓器癌の食道転移を有する患者のほとんどは,既に多臓器への転移を持っているものとして,化学療法または放射線療法が選択されることが多い 3.乳癌や肝細胞癌,直腸癌の食道転移の症例報告をみると,いずれも化学放射線療法が選択されていた 10)~12.しかし腎癌の遠隔転移は,performance statusが良好で,無病期間が長く,完全切除が可能な場合等,注意深く選択された患者において転移巣切除術は生存率の向上が期待されている 13.転移巣切除は,脳および骨転移を除いたほとんどの臓器に対して最も適切な局所療法であるが,切除予後不良因子として不完全切除術,脳転移,CRP高値,Furhman high gradeが挙げられている 14.今症例の様な,小病変の切除が予後を有意に改善する文献的報告はなく不明である.しかし,先述した原田らの症例では,転移性腎細胞癌に対してEMRを施行し再発なく生存しており,本間ら 15の腎細胞癌大腸転移の報告では,数カ月の経過で転移巣が急速に増大し,結腸閉塞となり結腸左半切除術を施行されている.今症例も同様に急速に病変が増大し,より高侵襲な治療に至った可能性も考慮されるため,小病変で粘膜内に限局した病変であれば,低侵襲な内視鏡治療を施行することは意義があり,患者にとっても有益性があると考えられる.

Table 1 

腎細胞癌の食道転移症例.

Ⅳ 結  論

腎淡明細胞癌の食道転移という稀な1例を経験した.腎細胞癌の転移病変に対しての局所切除は予後改善に寄与するため,頻度は稀であるが,粘膜内に限局した転移性病変に対しては,積極的に内視鏡治療を施行するべきと考える.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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