GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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VISUALIZATION OF BOTH THE SMALL INTESTINE AND COLON USING A SECOND-GENERATION COLON CAPSULE ENDOSCOPY WITH AN ADAPTIVE FRAME RATE
Satoshi OSAWA Shinya TANITakahiro MIYAZU
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2022 Volume 64 Issue 1 Pages 61-69

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要旨

PillCamTM COLON 2を用いた大腸カプセル内視鏡検査は,大腸ポリープの検出のみならず,潰瘍やびらんなどの炎症性病変の評価,血管性病変の評価などにも有用であり,フレームレート調整機能(adaptive frame rate;AFR)を検査の最初から使用することで,消化管の一括観察が可能となる.AFRモードを最初からマニュアル設定して使用することの利点は,大腸病変に加えて小腸病変の観察が良好な洗浄度で可能となる他,胃通過時間や小腸通過時間の測定ができること,頻度は高くないがAFRモードの自動起動遅延による不具合を回避するためにも有効である.現時点では,クローン病を除く炎症性腸疾患,消化管ポリポーシス,消化管感染症,血管炎,GVHD,NSAIDs起因性粘膜傷害など多くの疾患の評価に有用である.将来は,大腸カプセル内視鏡が禁忌となっているクローン病の評価においても,西欧諸国と同様に小腸大腸一括観察を行うPillCamTM Crohnʼs systemが国内承認されることが期待される.当院でのこれまでの大腸カプセル使用経験を含めて,AFRモードを用いた小腸大腸一括観察法について紹介する.

Ⅰ はじめに

大腸カプセル内視鏡検査(colon capsule endoscopy;CCE)は,大腸内視鏡検査とほぼ同等の大腸ポリープ検出率が報告され 1,大腸癌のスクリーニング検査の一端を担い,本邦では2014年1月に保険収載された.さらに2020年4月より後述する保険適応拡大がなされている.CCEは肛門からのスコープ挿入による痛みや恥ずかしさなどの精神的苦痛がなく,鎮静剤が不要であることなどからもその普及が期待されているが,大量の腸管洗浄剤を必要とすることや,バッテリー時間内の全大腸観察率に問題がある 2.近年はひまし油の使用を含む前処置レジメンの各種検討から徐々に改善が得られており 3,大腸ポリープのスクリーニング検査のみならず,潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の評価における有用性も報告されている 4)~6

現在使用されるコヴィディエン社のPillCamTM COLON 2は,フレームレート調整機能(adaptive frame rate;AFR)を検査の最初から使用することで,消化管の一括観察が可能となる 7),8.CCEの機能を最大限に引き出してより効果的に使用するために,AFRモードを検査開始からマニュアル設定して撮影を行う方法を紹介したい.

Ⅱ PillCamTM COLON 2について

PillCamTM COLON 2を用いたCCEは,現在はTable 1に示した保険適応が定められており,診療報酬は全大腸内視鏡検査と同じ15,500円であるが,カプセル内視鏡償還価格81,700円を合わせると97,200円の検査であり,他検査と比較し高額である.

Table 1 

大腸カプセル内視鏡の保険適応.

CCE本体は31.5×11.6mmである.視野角172°のカメラを両端に備えているため344°の視野角を有し,起動時には4枚/秒で撮像する.カプセルの移動速度に合わせて撮影枚数を自動で調整するAFRが搭載されているため,カプセルが大腸内を早く移動する場合には35枚/秒の撮影枚数となり見落としを少なくする機能となっている 9.バッテリー時間は約10~13時間程度でバッテリーがなくなった時点で撮影は終了となるため,全大腸観察ができるためには10時間以内でCCEが大腸から排泄される必要がある.

メーカーの初期設定では,バッテリー時間を有効に利用するために嚥下直後はスリープモードとなり撮影は行われず,CCE本体が胃から排出されて十二指腸に入り小腸絨毛を認識するとAFRモードが自動的に起動されて撮影開始となる.したがって,バッテリー時間内にカプセルが体外に排出される場合には小腸の途中から直腸までの大腸全域が読影可能な画像として記録されることになる.次にAFRモードをマニュアル設定することで全消化管の画像を記録する方法を解説する.

Ⅲ 検査の実際

(1)前処置法

現在,JACEの大腸ポリープ検出目的のJACE推奨レジメン(Table 2)と潰瘍性大腸炎の推奨レジメンが学会ホームページで公開されている.当院では,2014年1月の保険収載より検査を導入し学会推奨レジメンも参考にしながら試行錯誤を繰り返し,現在はTable 3のレジメンで検査を施行している.当日朝の下剤の服用は行わず,CCE内服後に小腸への排出を確認した後に速やかにモビプレップを用いたブースター内服を行うレジメンとしており,2019年以降のバッテリー時間内全大腸観察率は97%となっている.当院は大学病院で炎症性腸疾患患者が多いことから寛解期の潰瘍性大腸炎の評価で使用することも多い 5

Table 2 

JACEによる大腸ポリープ推奨レジメン.

Table 3 

当院の大腸カプセル内視鏡レジメン.

(2)AFRモードの起動方法

最初からAFRモードを利用して検査を施行するためには,PillCamTM レコーダDR3を以下の手順で操作して,手動でAFRモードを起動する必要がある.まずは,ワークステーションで必要事項を入力してチェックインを行い,PillCamTM COLON 2とPillCamTM レコーダDR3のペアリングを確認する.ペアリングが済むとDR3のディスプレイでリアルタイムビューアが利用できるようになる.Figure 1に示すようにボタンを②→①→③の順で押すとリアルタイムビューアの画像が表示されるため,この状態でボタン③を5秒間以上長押しするとAFRモードとなる.この時にアラーム音が鳴るため,被検者には音が鳴ることを事前に伝えた方が良い.アラーム音は応答ボタンを3秒以上長押しすることで消すことができる.これでAFRモードの強制起動は完了であり,検査終了までAFRモードを利用した撮像が行える.

Figure 1 

フレームレート調整機能:AFR(adaptive frame rate)モードの起動方法.

a:通常ディスプレイ時に画面の下にある3つのナビゲーションボタンを①から③の順番に押すとリアルタイムビューアが起動する.

b:リアルタイムビューアが起動した状態で,③を5秒以上長押しするとAFRモードとなる.この時にビーと大きなアラーム音が鳴るため,応答ボタンを3秒以上長押しすることで消すことができる.

Ⅳ 一括観察法の利点

AFRモードを検査開始時より起動することの利点は,主にTable 4に示す3点である.第一に大腸観察に加えて全小腸が観察可能となる.実際には食道や胃も観察は可能であるが,洗浄度や十分な撮影枚数などが良い条件で観察できるのが小腸である.利点の第二は,食道,胃,小腸,大腸のそれぞれの通過時間が正確に測定可能となる.これは臓器の移行部が確実に同定可能となるためである.ブースターレジメンの内容によって通過時間は影響を受けるため,あくまで特定条件のもとでの評価ではあるが,消化管運動機能の一端を反映するものと考えることができる.利点の第三は,CCEのAFRモード自動起動遅延による機器不具合を回避できることである.これについては,AFRモードを自動起動設定にした場合に稀ではあるが,小腸絨毛を自動認識できずにAFRモードの起動が遅れて大腸から撮影開始となる場合があり,これを回避できるということである.

Table 4 

一括観察法の利点.

CCEで小腸大腸を一括観察する場合には,ブースターの内服を行いながら通過時間の早い状態で小腸を撮影するため,CCEで撮影する小腸画像が,小腸カプセル内視鏡検査(small bowel capsule endoscopy;SBCE)と比較して十分な診断精度があるのかどうかが問題となる.われわれの施設では,CCEで撮像した小腸画像枚数,洗浄度,通過時間をSBCEと比較してみたところ小腸の撮像枚数には両者に有意差がなく,洗浄度は腸管洗浄剤をブースターとして使用するCCEで有意に良好であることが確認された(Figure 2).さらに両者において良性小病変である小腸リンパ管腫の同定率を比較してみたところ有意差を認めなかった.

Figure 2 

小腸観察におけるCCEとSBCEの比較.

a:胃,小腸,大腸の通過時間の比較.

b:小腸撮像枚数の比較.

c:小腸の部位別洗浄度の比較.

Ⅴ 読影の実際

CCEにおいて小腸大腸一括観察が特に有用な疾患は,大腸以外に小腸にも病変を有する疾患であり,血管炎,GVHD,NSAIDs起因性粘膜傷害,消化管感染症などの多くの炎症性疾患,家族性大腸腺腫症やPeutz-Jeghers症候群などのポリポーシス,潰瘍性大腸炎やベーチェット病などの炎症性腸疾患などが代表的であるが,実際にはほぼすべての疾患で小腸スクリーニングが行える点で有用と言える.当院で経験された症例を以下に提示する.

症例1は17歳,女性.不全型ベーチェット病で,口腔内アフタ,陰部潰瘍,食道潰瘍,回盲部から上行結腸に潰瘍を認めた.小腸病変の精査目的でSBCEを施行したところ,回腸近位部から回腸末端部まで広範囲に活動性の潰瘍を認めた(Figure 3-a).アダリムマブ導入後の小腸および大腸病変の改善度評価目的でCCEを実施したところ,回腸の潰瘍は狭窄なく治癒し,上行結腸には治癒傾向にある小潰瘍を認め,アダリムマブの治療効果が確認された(Figure 3-b).

Figure 3 

不全型ベーチェット病の治療前後のカプセル内視鏡所見.

a:症例1.治療前に施行したSBCEによる小腸病変.

b:症例1.治療後に施行したCCEによる小腸大腸一括観察による評価.

症例2は25歳,女性.全大腸炎型の潰瘍性大腸炎で入院した.CCEで全大腸に発赤,浮腫,小潰瘍散見を認め,回腸遠位~末端部にも粘液の付着した浅い小潰瘍,びらんが散在しbackwash ileitisの所見を認めた(Figure 4-a).

Figure 4 

CCEによる小腸大腸一括観察法によるカプセル内視鏡所見.

a:症例2.潰瘍性大腸炎.

b:症例3.Cronkhite-Canada症候群.

c:症例4.Peutz-Jeghers症候群.

d:症例5.回腸異所性膵.

症例3は62歳,女性.Cronkhite-Canada症候群.ステロイド25mgから10mgまで減量中にCCEで病変を評価した.胃前庭部には発赤調のポリープ様隆起が多発していた.空腸には小ポリープが散見され,上行結腸に複数の有茎から亜有茎性のポリープ多発を認めた(Figure 4-b).

症例4は21歳,女性.Peutz-Jeghers症候群.空腸には小ポリープが見られ,回腸に大きな亜有茎性の過誤腫性ポリープを認めた.S状結腸には小さな憩室を認めた(Figure 4-c).

症例5は64歳,女性.ANCA関連腎炎にて維持透析中.貧血(Hb 8)と便潜血反応陽性を指摘された.子宮がん術後の影響で大腸内視鏡深部挿入困難でCCEによる小腸大腸病変評価を行った.空腸回腸移行部付近に3cmほどの頂部に陥凹を伴う粘膜下腫瘍様隆起を認めた.本例は外科的切除にて異所性膵と診断された(Figure 4-d).

このようにCCEを用いて小腸大腸一括観察が可能であり,様々な疾患においての病状評価に有用と思われる.

Ⅵ 今後の展望

本邦では現在,クローン病についてCCEは禁忌に該当し検査が施行できない.しかしながら,海外ではパテンシーカプセルを用いることで,クローン病に対してPillCamTM COLON 2と同じ機能のカプセル内視鏡を検査開始時点からAFRモードで撮影して小腸大腸一括観察を行うシステムがPillCamTM Crohnʼs systemとして承認されており,専用のソフトウェアとともに臨床使用されている 10),11.しかも,これは小児においても使用されており,バルーン内視鏡(balloon-assisted enteroscopy;BAE)が選択しにくい小児では特に有用性が高い可能性がある 12.今後,本邦での承認についても期待される.

CCEによる小腸大腸一括観察では,読影に時間を要することが課題である.現在,様々なカプセル内視鏡の人工知能(artificial intelligence;AI)を用いた読影システムの開発が進んでいる 13.このような新たなモダリティーが実臨床で使用できる日も遠い未来ではないと思われる.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

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