GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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ENDOSCOPIC FINDINGS OF GASTROINTESTINAL GRAFT-VERSUS-HOST DISEASE ENTERITIS AND DRUG-INDUCED ENTERITIS
Ryogo MINAMI Satomi SHIBATAToshiro IIZUKA
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2023 Volume 65 Issue 10 Pages 2159-2173

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要旨

種々の腸炎の診断において,内視鏡所見は重要である.一方で類似した内視鏡所見が違う疾患で認められることも多く,その鑑別には背景因子の把握とともに生検による組織診断が助けとなる.特徴的な内視鏡所見は,Graft-versus-host disease(GVHD)腸炎では,びまん性浮腫状変化・血管透見像の消失・粘膜剝離であり,non-steroidal anti-inflammatory drug(NSAIDs)起因性腸炎では,地図状びらんや浅い類円形もしくは縦走潰瘍,Clostridioides(Clostridium) difficile感染症では偽膜,膠原繊維性腸炎では浮腫・顆粒状粘膜・ひび割れ・粘膜裂創,immune-related Adverse Events(irAE)腸炎では,発赤・顆粒状粘膜・浮腫状粘膜・血管透見像の低下である.典型的な内視鏡所見の認識は診断の一助となる.

Abstract

Endoscopic findings are important for the diagnosis of various types of enteritis. However, because various conditions have similar endoscopic findings, histological analysis of biopsy specimens is crucial for differentiating among them and understanding their background factors. The characteristic endoscopic findings of various gastrointestinal conditions include edema, low vascular permeability, and mucosal exfoliation in gastrointestinal graft-versus-host disease enteritis; map-like erosions and shallow and round or longitudinal ulcers in non-steroidal anti-inflammatory drug (NSAIDs)-induced enteritis; pseudomembranes in Clostridioides difficile infection; edema, granular mucosa, cracks, and mucosal tears in collagenous colitis; and redness, granular mucosa, edematous mucosa, and reduced translucency in immune-related Adverse Events (irAE) enteritis. Recognizing the characteristic endoscopic findings of each disease can significantly facilitate diagnosis.

Ⅰ 緒  言

高齢化社会に突入した現代において,高齢者を中心に一人が内服する薬剤が多くなってきている.そうした中薬剤に伴う腸炎はしばしば経験される.また血液疾患に対して移植術が広く行われるようになり,それに伴う2次的影響としてのGraft-versus-host disease(GVHD)腸炎が経験される.移植を行わない施設ではGVHD腸炎に遭遇する機会はほとんどなく,その臨床像や特徴的な内視鏡所見について経験が乏しくなることも推測される.そこで今回自験例を交えてGVHD腸炎についての概略や内視鏡像を提示し,理解を深めることで診断に到達する一助にしたい.また日常遭遇しうる薬剤性腸炎に関して,特に代表的な非ステロイド系抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)起因性下部消化管粘膜障害,ClostridioidesClostridiumdifficile感染症,膠原繊維性腸炎,免疫関連有害事象(immune related adverse events:irAE)腸炎に関して概説する.

Ⅱ GVHD腸炎

1.疾患概念

GVHDは,造血幹細胞後に生じる主要な合併症でドナーTリンパ球の宿主に対する免疫学的反応によるものと定義される 1.急性GVHD腸炎の頻度は30-60%で 2しばしば転帰は不良となる 3)~5.GVHDは様々な臓器を侵すが,消化管GVHDが最も治療が難しい 6とされている.症状は下痢,血便,嘔気,腹痛などであり,多くは同種造血幹細胞移植から100日以内にみられる 7),8.下痢の量は重症度の評価に重要で,生存率と逆相関すると報告されている 4),9

診断は,臨床症状に基づき,内視鏡検査を施行し病理組織診断をもって確定に至る.生検による病理学組織学的評価が不可欠であり 10,リンパ球浸潤を伴った,陰窩の消失と陰窩細胞のアポトーシスが特徴とされる 11),12.診断を難しくする要因としては,他の病態が合併し,鑑別が難しくなることがあげられる.鑑別疾患としてはregimen-related toxicityやCMV(Cytomegalovirus),EBV,Rotavirus,Adenovirus,Norovirusなどのウイルス感染症,血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy:TMA),偽膜性腸炎(Clostridium difficile infection)や細菌性腸炎,カンジダなどの真菌感染症があげられる 13.これらは消化管GVHDと同じ症状や似たような臨床所見を呈することが多い 14.感染症とGVHDの治療は相反するものであり,GVHDの治療導入には確実な診断が重要である 15.また消化管GVHDは病理組織学的な所見をもとに重症度が分けられ,Grade2以上が臨床的にも明らかなGVHDとして臨床症状に反映されると考えられている.そのためGrade2以上が免疫抑制剤を開始する適応となっている 16

GVHD腸炎は全身状態が不良な症例も多く,内視鏡検査が困難である症例や,血小板数低下による出血リスクのために生検が困難であったり,粘膜障害などによる疼痛で回腸までの観察が困難である症例などもある.内視鏡検査後の穿孔やそれに引き続く死亡例 17も報告されており,内視鏡検査の適応,観察範囲については慎重に検討する必要がある.

2.内視鏡所見の特徴

GVHD腸炎の内視鏡所見は特徴的な所見が多彩に認められる 11),18)~20.結腸の内視鏡所見としては,びまん性浮腫状変化(orange peel appearanceや亀甲状粘膜)(Figure 1-a),血管透見像の消失,びまん性点状発赤,びらん(Figure 1-b),潰瘍,粘膜剝離があげられる.こうした所見が認められる部位から生検を行うと診断はつきやすい.ただし,異常所見のない正常粘膜からの生検で病理組織学的にGVHDと診断されることも報告されており 18),21),22,異常所見が明らかでない場合も同部位からの生検を考慮すべきである.

Figure 1 

GVHD腸炎の内視鏡像.

a:直腸から盲腸にかけて浮腫状の粘膜が広がり,orange peel appearanceを呈している.

b:浮腫状の粘膜を背景に,発赤したびらんを認める.

特徴的な所見としての浮腫状変化はorange peel appearanceや亀甲状粘膜模様(tortoiseshell pattern)と形容される 22)~26.Orange peel sign(Figure 1-a)は粘膜下の浮腫による大腸粘膜の無名溝の拡張を反映している.亀甲状粘膜模様も浮腫により粘膜固有層の腫大を来し,その結果生じた無名溝の拡張と開大した陰窩が強調されることによる所見である.粘膜面の細かいひび割れ様の浮腫状粘膜を呈し,インジゴカルミン散布により明瞭になる 27.同所見は移植後の感染性腸炎と比較して有意にGVHD腸炎において認める頻度が高かった(70% vs 0%,p<0.001)とする報告もある 28.Endoら 29は直腸とS状結腸におけるorange peel sign・点状の発赤・小さな粘膜剝離・びまん性の粘膜欠損の4つの内視鏡所見をもとに,生検でどれくらい診断が可能であったかを検討している.その結果,GVHDに特徴的な陰窩のアポトーシスを認めた割合は,順に87.5%・83.3%・87.2%・88.9%であり,これらの所見が診断に有用であったことを報告している.

重症度と関連する内視鏡所見として,粘膜剝離があげられている 11),30.同所見の出現頻度は低いものの生検による特異度は高く,認められた症例すべてにおいて病理組織学的に重症GVHDと診断されたと報告されている.

潰瘍や広範囲の粘膜脱落を認めた場合,重要な鑑別疾患としてCMVとTMAがある.CMV腸炎に関しては,特徴的な内視鏡所見として知られているpunched-out ulcer(打ち抜き様潰瘍)(Figure 2)が認められると診断は可能となる.一方で地図状や縦走潰瘍,または潰瘍には至っていないびらんや発赤を呈することもあり 27,内視鏡所見だけでは診断が困難となることも多い.一方TMAは,それに特徴的な内視鏡所見がなく,生検による病理組織学的な診断に依存するしかないのが現状である.

Figure 2 

GVHD腸炎にCMV腸炎が合併した症例.

横行結腸に類円形で境界明瞭な潰瘍を認める.周囲には顆粒状の粘膜が広がる.

回腸末端まで到達できた場合,そこで認められる回腸末端の内視鏡所見としては,絨毛の萎縮(Figure 3)が重要であり,重症度の評価に有用である.Onozawaら 31は,拡大内視鏡による回腸末端の絨毛の萎縮・脱落がGVHDの早期発見に有用であることを報告した.Sugiharaら 32),33は,回腸末端における絨毛長の短縮・脱落の所見がGVHD腸炎の診断において正診率82%,感度70%,特異度72%,陽性的中率61%,陰性的中率79%であったと報告している.また拡大内視鏡で重度の絨毛萎縮が認められた場合,ステロイド抵抗性であることを報告している.自験例101例においても,絨毛の萎縮はGVHDの診断において,感度59%,特異度67%,陽性的中率87%,陰性的中率31%であった.また組織学的に重症であった24例のうち絨毛の萎縮を16名(66.7%)に認めており,GVHD腸炎における診断において有用な所見であった.

Figure 3 

回腸末端でのGVHD腸炎の内視鏡像.

a:白色光観察では粗造な粘膜を呈するが,絨毛の観察に関しては不明瞭である.

b:NBI観察では絨毛の平坦化・萎縮が明瞭に描出される.

Ⅲ NSAIDs起因性下部消化管粘膜障害

1.疾患概要

NSAIDsは,その抗炎症作用,鎮痛作用,抗血小板作用のために関節リウマチ,変形性関節症,虚血性心疾患や脳血管障害など様々な場面で使用されている.一方でNSAIDsは消化管に粘膜障害を形成することが知られており,特に下部消化管出血よりも上部消化管出血のリスクを上げると報告されてきた 34.しかし,バルーン補助内視鏡やカプセル内視鏡の普及に伴い,NSAIDsによる小腸粘膜障害が高率に引き起こされることが明らかとなった 35),36

小腸粘膜障害の機序としては,NSAIDsのシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害作用によるプロスタグランジン(PG)欠乏に起因する粘膜防御能の低下と本剤による上皮細胞の直接障害(topical effect)があげられる 37.上皮細胞の障害の後,腸管の透過性亢進とともに腸内細菌や消化液が粘膜内に侵入し炎症を惹起することにより粘膜障害が引き起こされる 38

NSAIDsは大腸においても頻度は低いものの粘膜障害を来すことが知られ 39,潰瘍形成を主体とする潰瘍型と下痢や出血を臨床症状として伴う腸炎型に分類される 40

診断基準としては,①発症前のNSAIDs使用歴が明らかであること②発症前の抗菌薬使用歴がないこと③生検または便培養で病原細菌が陰性であること④病理組織学的に特異的炎症,血管炎,慢性炎症性腸疾患の所見がないこと⑤NSAIDsの中止のみで臨床的および内視鏡所見の改善を認めること,が一般に用いられている 41

NSAIDsに起因する小腸粘膜障害,大腸粘膜障害はいずれもNSAIDsの休薬が治療となる.出血性小腸潰瘍に対するミソプロストールの治癒促進作用の報告 42などもあるが,NSAIDs起因性下部消化管粘膜障害に対する治療方法を検討した質の高い臨床研究は今日までに報告されていない 43.また,プロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)は,小腸においては腸内細菌叢を変化させ,結果としてNSAIDsによる小腸粘膜障害と出血のリスクを上昇させる可能性 44)~46の報告もある.

2.内視鏡像

NSAIDs起因性小腸粘膜障害としては,点状発赤やびらん,その進行形としての潰瘍が代表的である 47.びらんは地図状となることが多く,潰瘍は比較的浅く,類円形潰瘍や縦走潰瘍など多彩な形態を呈する.特徴的なことは,介在粘膜においては正常で粘膜障害の配列に規則性がないことである 48.また頻度は低いものの,膜様狭窄(Figure 4-b)も本疾患に特徴的であるとされる 49.膜様狭窄は潰瘍病変の終末像または特殊な治癒期と考えられている 50.病変の部位に関しては,潰瘍などの粗大病変が回腸に多く,小腸の口側と肛門側では病変の性状が異なる可能性があることが報告されている 51),52

Figure 4 

NSAIDs起因性大腸粘膜障害の内視鏡像.

a:横行結腸に軽度の膜様狭窄と輪状潰瘍を認める.

b:S状結腸に軽度の膜様狭窄と輪状潰瘍を認める.一部の潰瘍は自然出血を伴う.周囲の粘膜には明らかな炎症性変化を認めない.

c:NSAIDsを休薬し2カ月後に行った下部内視鏡検査で潰瘍が瘢痕化していた.

NSAIDs起因性大腸粘膜障害のうち,潰瘍型では右側結腸,特に回盲部付近に好発する 40.潰瘍の形態は様々で,類円形,地図状,不整形,縦走潰瘍,輪状潰瘍(Figure 4-a,b)などであるが,いずれも境界明瞭で比較的浅いことが多いとされている 40),53.潰瘍型であっても薬剤中止後8週間以内におおむね瘢痕化する(Figure 4-c 54.一方腸炎型では,明らかな好発部位はなく全大腸に病変が及ぶことが多く 40),55,出血性大腸炎またはアフタ性大腸炎の像を呈する 55

NSAIDs起因性下部消化管障害の内視鏡所見における鑑別疾患としては,腸管ベーチェットや腸結核,Crohn病があげられる.腸管ベーチェットも境界明瞭な潰瘍を呈するが,NSAIDsに起因するものと異なり潰瘍は深いことが多い.またNSAIDsに起因する潰瘍は潰瘍周辺に炎症性変化を伴うことはない.腸結核は輪状潰瘍を認めることがあるが,自相が異なる病変(開放性潰瘍と瘢痕が併存する)を呈することが特徴である.Crohn病は主に腸管膜付着側にみられる長い縦走潰瘍が特徴である.小腸の膜様狭窄の鑑別としては,術後吻合部狭窄,放射線照射,クローン病,結核,好酸球性腸炎,リンパ腫などがあげられる 56)~60

Ⅳ ClostridioidesClostridiumdifficile感染症

1.疾患概念

ClostridioidesClostridiumdifficileは,芽胞形成性の偏性嫌気性グラム陽性桿菌で,健常成人の腸管内にも存在するとされている.腸内細菌叢の乱れから異常増殖し,毒素を産生すると発熱や下痢を起こし,C.difficile感染症(C.difficile infection:CDI)を発症する.CDIは,国内ガイドラインでは「2歳以上でBristol Stool Scale 5以上の下痢(24時間で3回以上または平常時より多い便回数)を認め,便中のトキシンが陽性もしくはトキシン産生性のC.difficileを分離する,もしくは下部消化管内視鏡や大腸病理組織にて偽膜性腸炎を呈するもの」と定義されている.

診断に関しては,C.difficileにおける毒素産生株は30%であり,C.difficileの存在というよりも毒素の証明が重要である.ただ,C.difficile toxinの検査は感度が60-80%であり偽陰性となる症例が存在することは留意すべきである 61

CDIには幅広い病態が存在し,無症候性のキャリアから中毒性巨大結腸症を伴う劇症偽膜性大腸炎まで存在する 62)~64.CDIの感染経路は糞口経路で,典型的には直近の抗菌薬使用と関連される 62),65.CDI発症における抗菌薬の種類に関しては,第3,第4世代セフェム系,広域ペニシリン系,カルバペネム系が高リスク,アミノ配糖体系,メトロニダゾールは中リスク,マクロライド系,ST合剤,バンコマイシン,第1世代セフェム系は低リスクとされている 65.長期にわたる抗菌薬投与や複数の種類の抗菌薬使用もリスクである 66)~69.他のリスクとしては,入院,年齢(>65歳),免疫抑制,複数の併存疾患 70),71がある.また,酸分泌抑制薬(PPI)がCDIのリスクであるとの報告もあるが,C.difficileの芽胞は酸に対して安定であり,胃酸のpHに左右されないと思われ,リスクであるかは不明である 72.近年は,市中発症のCDIが増加していることも報告されており,院内発症と比較して,若年で発症し明らかな抗菌薬投与歴がなく,上記リスク因子にも該当しないことが特徴である 72

炎症性腸疾患の患者はCDIの有病率が高く 73,健常人と比較して約5倍も発症リスクが高いことが報告されている 74.活動期の炎症性腸疾患の患者が下痢を来した場合,抗菌薬使用の有無にかかわらずCDIの除外のために便検査を考慮するべきとする意見もある 75

2.内視鏡像

CDIの典型的な内視鏡所見は,偽膜である(Figure 5-a).偽膜は黄白色調の盛り上がった小円形の膜状を呈するもので,壊死物質で形成されている.偽膜を形成する症例はCDIの重症型と考えられ 76,進行すると,偽膜が面状や斑状に融合した所見を呈する(Figure 5-b 77),78.また,背景に炎症性腸疾患がある患者の場合,偽膜がみられにくいことが報告されている 79

Figure 5 

ClostridioidesClostridiumdifficile感染症の内視鏡像.

a:直腸からS状結腸にかけて黄白色調の偽膜が点状に散在している.びらんや潰瘍は認めない.

b:偽膜が面状に癒合している.

CDIの内視鏡像には,偽膜以外にも種々の所見が認められる.稲松 76による解析では,便培養でCDが検出された症例の下部内視鏡所見は,51.7%で偽膜性腸炎であったが,33.3%では非特異的腸炎(内視鏡所見として浮腫,発赤,充血,粗造粘膜,血管透見像消失などを認めるもの),10%では正常像であった.また上田ら 80),81は,CDI:39例の内視鏡像の検討では,偽膜型,アフタ型,非特異型,正常型がそれぞれ36%,28%,15%,20%に認められたことを報告している.大腸だけではなく小腸に偽膜性腸炎を呈する症例もある.

C.difficileによる小腸炎は大腸の全摘・亜全摘後の場合が多く,重症例が多いと報告されており注意を要する 82

偽膜を呈する場合は本症の診断は難しくないと思われるが,軽微な所見のみの場合,内視鏡所見のみで診断することは容易ではない.抗菌薬投与歴などの病歴や背景疾患,CD toxinの検出などを組み合わせて診断していく必要がある.

Ⅴ 膠原繊維性腸炎(collagenous colitis)

1.疾患概念

Collagenous colitis(CC)は1976年に提唱された,慢性の水様下痢と大腸上皮直下の膠原繊維帯束(sub-epithelial collagen band:SECB)の肥厚を特徴とする疾患である 83),84.診断は主に病理組織学的所見に基づき,粘膜固有層のリンパ球,形質細胞浸潤,SECBの10μm以上の肥厚が診断基準とされている 85.その頻度は,堀田ら 86によると血便を伴わない慢性下痢患者82名中15名,18.3%であった.CCの病因は不明で複数の要因が考えられているが,本邦においては薬剤に関連した症例がほとんどである 87)~89.特に注目されているのが,PPIとNSAIDsである.本邦の報告では,欧米と比較してCC患者のPPI服用率が53-83%と高く 86),88),90),91,工藤ら 92によるとCC報告例226名中,PPI内服例は158例(69.9%),ランソプラゾール(LPZ)内服例はうち148例(65.5%)であった.PPI服用開始から発症までの期間としては,数カ月とされる 93が,NSAIDsは内服開始してから数年後に発症した症例 94も報告されており,詳細な問診が不可欠である.また,近年悪性腫瘍に対するPD-1/PD-L1阻害薬の使用が増加しているが,PD-1/PD-L1阻害薬関連のCCも報告されている.重度の下痢においても内視鏡所見は軽微であることが特徴とされる 95

CCの主要な症状は慢性下痢であり,難治性の下痢として放置されることも多く,高齢患者のADLを著しく低下させることがある 96.また下痢症状がみられずに穿孔など 97急性腹症を契機にその後CCと診断された症例も存在する.急激な経過をたどる場合があることを認識しておくことが重要である.治療としては,まず原因と思われる薬剤の中止を行う.通常は中止から数日から数週で下痢は消失する.

2.内視鏡所見

CCの内視鏡所見として,発赤,浮腫(Figure 6-a),顆粒状粘膜,毛細血管の増生,ひび割れ(Figure 6-b),粘膜裂創(縦走潰瘍/“cat scratch”)(Figure 6-c)などが知られている 93),98)~105.本邦からの報告 87)~89),106ではこれらの内視鏡の有所見率は,75-82%とされている.

Figure 6 

膠原繊維性腸炎の内視鏡像.

a:上行結腸から下行結腸にかけて,2-3mm大の円形のびらんとその周囲の浮腫状粘膜を認めた.

b:直腸はインジゴカルミン散布でひび割れ様の粘膜を呈していた.

c:直腸とS状結腸に縦走する粘膜裂創を認めた.cat scratch colonを呈する.

この中で縦走潰瘍は,他の軽微な所見と比較して客観性のある特徴的な所見である.細長い,粘膜がさけたような形態をしており,辺縁の浮腫や発赤に乏しい点で虚血性大腸炎やクローン病でみられる潰瘍とは異なる 107.潰瘍というよりも,裂け目の様相を呈し,mucosal tearやfractured colonと称されることもある 108),109.McDonnellら 110は出血を伴うひっかき傷様の線条を“cat scratch colon”と表現し,大腸内視鏡所見を行った8,277例中21例にこの所見が認められ,3例がCCであったと報告している.欧米からの報告では縦走潰瘍陽性率は1-3%と低く,右側結腸に多いとされる 111)~113が,本邦からの報告では35-46%と高く,左側結腸に多い 87),88),113.成因としては,膠原繊維沈着で硬化した粘膜が腸蠕動や過伸展に伴う内圧上昇や機械的刺激により断裂するためと考えられている 108.粘膜裂創からCCの診断がつくケースもみられる 114),115.縦走だけではなく,波打つような粘膜裂創(wavy mucosal tear)を呈することもある.ひび割れ所見も,軽微な変化であるが診断をつける有用な所見である.CCに特異的な所見ではないが,CCによくみられる.白色光観察では注意しないと同定が難しいが,血管透見が不明瞭となり,わずかな浅い溝状構造がみられる.インジゴカルミンを散布すると縦走する細い溝として認識しやすくなる.粘膜裂創と同様に左側結腸に好発する 102

CCの鑑別疾患は多彩である.慢性下痢で内視鏡所見として異常がない場合,腸管過敏症や原虫感染症(腸管スピロヘータなど)が鑑別となる 101.急性発症の場合は感染症の除外が必要である.粘膜の血管増生や浮腫,発赤を呈する場合は,炎症性腸疾患が鑑別となる.内視鏡所見のみで診断を進めることは困難であり,生検による病理組織学的評価が重要である.縦走潰瘍は虚血性腸炎でも認めるが,この場合は潰瘍周囲に浮腫や炎症を伴うことが内視鏡上の鑑別点となる.

CCの軽微な所見の拾い上げのための工夫として,色素散布やNarrow band imaging(NBI)観察,拡大観察がある.顆粒状粘膜がインジゴカルミン散布により明瞭化すること 116,ひっかき傷様の線条,いわゆる“cat scratch colon”がNBI観察により明瞭に描出されること 117,NBI拡大観察において,様々な口径からなる上皮下毛細血管網の存在がコラーゲン沈着を示唆すること 118など報告がある.

Ⅵ 免疫チェックポイント阻害薬による腸炎

1.疾患概念

irAE腸炎は,免疫チェックポイント阻害薬(immune-checkpoint inhibitors:ICI)によって引き起こされる腸炎である.そもそもICIは,活性化T細胞上に発現し免疫を抑制する上で重要なcytotoxic T-lymphocyte-associated antigen(CTLA)-4やprogrammed cell death protein(PD)-1,そのリガンドであるPD-L1を阻害することでT細胞が活性化し,抗腫瘍効果をもたらす.様々な固形腫瘍に対して抗腫瘍効果を発揮することが報告されており,同時に有害事象であるirAEも多く報告されるようになってきた 119.これは健常組織への免疫寛容の喪失による結果であり 120全身の臓器が標的となりうるが,皮膚とともに消化管の頻度が高い 121.irAE腸炎,ICI関連大腸炎の発症頻度は,抗CTLA-4抗体投与で5.7-9.1%,抗PD-1抗体で0.7-1.6%,抗PD-L1抗体では1.3%,2剤ICIを併用するcombination therapyでは13.6%であった 122),123.irAE腸炎は重症化すると致死的になることもある.特にCTLA-4抗体による致死的irAEとしてirAE腸炎が最も頻度が高く,CTLA-4抗体の投与をうけた234例において5.1%に消化管穿孔を生じたとの報告 124がある.irAE腸炎の症状としては,下痢,腹痛,血便,発熱が多く,症状の出現時期としては,抗CTLA-4抗体では投与開始後4-7週が好発時期 125だが,投与終了後数年かけてから発症することもある.併用療法においてはより早期に出現する傾向があることも報告されている 126

消化管irAEの診断としては,明確な基準がないのが現状であり,症状や内視鏡所見,病理組織学的所見を把握し,鑑別疾患を除外していく診断プロセスである.鑑別疾患としては,感染性下痢症,消化管悪性腫瘍の併存,放射線性腸炎,がん性腹膜炎,他の癌治療薬の副作用があげられる 126.特にirAE腸炎に消化管感染症が合併すること(Salmonella enteritides 127,C.difficile 128,CMV 129)も報告されておりその除外が重要である.ICI投与による下痢や腸炎の重症度は,一般的にCommon Terminology Criteria for Adverse Events, Version 5 (CTCAE)に準じて評価される 130

CTCAEのGradeにより治療は異なる 122),123が,Grade2以上でICIの休薬と全身ステロイド投与が推奨されている 131)~133.また,症状の改善を認めない場合にはインフリキシマブが考慮される.症状出現後5日以内にステロイド治療が開始された場合は,それよりも遅れて治療開始となった場合に比べて有意に早期に症状の軽快が認められることが示されており 134,早期診断が重要である.また,Grade2以上のirAE腸炎においてICI再開は注意が必要である.特に再発リスクはCTLA-4阻害薬が用いられた場合に高いと考えられており,同剤による腸炎においてはICI再開の際には,PD-1/PD-L1阻害薬へのスイッチが有効と考えられている 135

2.内視鏡所見

irAE腸炎の内視鏡所見は,多彩である.代表的な所見として,正常様粘膜,発赤,顆粒状粘膜,浮腫状粘膜(Figure 7),血管透見像の低下(Figure 7),粘液付着(Figure 7),びらん,潰瘍などがあげられる 136)~142.病変の広がりは,典型例では左側結腸であり,右半結腸のみに病変が広がることは稀(3-8%)である 136),137.内視鏡所見の多くはpatchyよりもdiffuseに広がる 143.これらの内視鏡所見はinflammatory bowel disease(IBD),特に潰瘍性大腸炎と類似している 142),144

Figure 7 

irAE腸炎の内視鏡像.

直腸から盲腸にかけて,びまん性に血管透見像が消失した浮腫状で粗造な粘膜と白色付着物を認める.潰瘍や出血は明らかではない.潰瘍性大腸炎様である.

内視鏡で観察する際の注意点として,irAE腸炎の37%では正常粘膜様を呈すること 137),145,回腸のみにirAE腸炎が起きていること 146,大腸炎を伴わない小腸炎がある 147ことがあげられる.

また,他の薬剤との併用の際,例えばPD-1/PD-L1阻害薬と殺細胞性抗がん剤との併用療法の場合,irAE腸炎の内視鏡所見は非典型的になる 148ため,投与されている薬剤の把握は重要である.

内視鏡所見の鑑別としては,細菌性腸炎や薬剤性collagenous colitisなどがあるが,特に潰瘍性大腸炎に類似の内視鏡像を呈した場合,内視鏡像のみで診断することは困難であり,感染性腸炎の除外を行いつつ生検を行い,病理組織学的な評価を行うことが重要である.

irAE腸炎の重症度と関連する内視鏡所見としては,潰瘍がある.深く大きい潰瘍の存在は治療に生物学的製剤が必要であること,入院および入院期間の長期化と関連していた 137.またステロイド抵抗性であり,生物学的製剤の導入の必要性を予測する内視鏡所見である 145),149.潰瘍の中でも2mm以上の深さを呈したり大きさが1cm以上の潰瘍はステロイド抵抗性の所見であり,上行結腸から脾灣曲部にかけての広範囲な所見を呈する場合も治療抵抗性の所見である 137

irAE腸炎の診断に拡大内視鏡の有用性が報告されている.クリスタルバイオレット染色を用いた拡大観察上,密度が減少したり部分的にピットが減少した所見は,irAE腸炎を示唆する特徴的な所見であったと報告されている 150

複数の悪性腫瘍に対するICIの優れた抗腫瘍効果のため,今後ICIの使用は増加すると予測されている 151)~153.irAE腸炎が疑われる時には,その多彩な内視鏡所見に注意し,生検を行うことが適切な診断につながるといえる.

Ⅶ おわりに

GVHD腸炎および,代表的な薬剤性腸炎の内視鏡像を提示した.いずれの疾患も,内視鏡検査のみで診断を確定させることは難しいが,背景因子を考慮しながらその疾患に典型的な内視鏡像を確認することで診断に近づくことが可能である.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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