GASTROENTEROLOGICAL ENDOSCOPY
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POORLY DIFFERENTIATED ADENOCARCINOMA OF THE APPENDIX IS ASSOCIATED WITH ULCERATIVE COLITIS - A CASE REPORT
Atsushi IKEHATA Takeharu SHIROKIYasumasa SEKINOTakayuki MASUOSadahide ONO
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2024 Volume 66 Issue 10 Pages 2467-2474

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要旨

症例は64歳,男性.45歳時に潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)を発症し,58歳時からはアダリムマブにて臨床的寛解が維持されていた.定期外来受診時に胆道系酵素の異常がみられ,多発肝転移を伴う虫垂低分化腺癌と診断された.画像検査の遡及的な解析により,経過中に虫垂開口部には粘膜病変が出現していたが,組織学的な確定診断は得られなかった.UCと虫垂癌の合併は極めてまれではあるが,UCの経過中に虫垂開口部に粘膜病変がみられた場合は虫垂癌による二次的な変化や慢性虫垂炎との鑑別が重要である.鑑別ができない場合は,虫垂癌を念頭においた他の画像検査による評価や手術介入について検討が必要である.

Abstract

A 64-year-old man with a 19-year history of ulcerative colitis (UC) (total colitis) in clinical remission was treated with adalimumab. Laboratory examinations at regular outpatient visits revealed increased biliary enzyme levels. Endoscopic, histological, and radiographic examinations indicated a poorly differentiated adenocarcinoma with multiple liver metastases. Retrospective analysis of imaging results revealed mucosal lesions at the appendiceal orifice during the clinical course; however, a definitive histological diagnosis could not be made. Although appendiceal adenocarcinoma associated with UC is rare, if a mucosal lesion is observed in the appendiceal orifice during UC, it should be differentiated from changes secondary to appendiceal carcinoma or chronic appendicitis. If a diagnosis cannot be made, other imaging examinations and surgical interventions for appendiceal carcinoma should be considered.

Ⅰ 緒  言

潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)では直腸から口側に連続してびまん性の粘膜炎症がみられる 1が,直腸炎型または左側大腸炎型の半数以上の患者では虫垂開口部に内視鏡像および組織像がUCに類似する非連続性病変を認める 2.また,UCでは長期経過のなかで慢性炎症を背景に,前癌病変であるdysplasiaを介する発癌経路(inflammation dysplasia carcinoma sequence)により腺癌を合併し,colitis associated cancer(CAC)と呼称される 3.一方で,dysplasiaを介さずに発生する散発性大腸癌(sporadic adenocarcinoma:SA)がみられることも報告されている 4

UCに原発性虫垂腺癌を合併することは極めてまれであり 5,これまでに十数例の報告がみられるのみである.

今回,経過中に虫垂開口部にUCの病変と類似性が乏しい内視鏡像と生検組織像を呈する粘膜病変が出現し,後に低分化腺癌と診断されたUCの1例を経験したので報告する.

Ⅱ 症  例

患者:64歳,男性.

主訴:なし(胆道系酵素の上昇).

既往歴:2002年(45歳時)よりUC(全大腸炎型)にて治療を継続していた.2020年(62歳時),胃消化管間質腫瘍にて胃部分切除術をうけた.

家族歴:家族に大腸癌と炎症性腸疾患なし.

内服薬:メサラジン2,400mg/日,酪酸菌製剤3g/日,エソメプラゾールマグネシウム水和物20mg/日.

現病歴:再燃寛解型のUCに対して,2015年(58歳時)より当科でアダリムマブによる治療が開始され,その後は定期的な継続投与により臨床的な寛解が維持されていた.2021年10月の外来受診時の血液検査で,胆道系酵素,LDH,白血球,CRPの上昇がみられた.腹部US検査で,肝内に多数の中心部高エコーで辺縁部低エコー性の腫瘤(bullʼs eye sign)がみられた.原発巣の検索のため精査と過去の画像所見の遡及的な検討が行われた.

現症:身長183cm,体重81kg,体温36.1℃,血圧:134/78mmHg,脈拍:96/分・整.結膜に貧血や黄疸を認めず.腹部は平坦軟で,圧痛や反跳痛や筋性防御はなく腫瘤は触知しなかった.

血液検査所見:血算では,白血球数10,830/μLと高値であり,ヘモグロビン11.6g/dLの正球性正色素性貧血がみられた.生化学検査では,ALP 202U/L,γGTP 193U/L,LDH 310U/L,CRP 5.69mg/dLと上昇がみられた.腫瘍マーカーでは,CEA 31.8ng/mL,CA19-9 564.9U/mL,神経特異エノラーゼ(neuron specific enolase) 20.5ng/mL と高値であった.

大腸内視鏡検査所見(5年前,2016年):直腸から横行結腸まで血管透見像消失,粘膜微細顆粒状であり,Mayo内視鏡スコア(Mayo Endoscopic Score:MES)1の所見であった.虫垂開口部に粘膜病変はみられなかった(Figure 1).また,2009年(当科初診)より2016年まで計6回の大腸内視鏡検査が施行されたが,いずれにおいても虫垂開口部は正常粘膜であり粘膜病変はみられなかった.

Figure 1 

大腸内視鏡検査所見(5年前,2016年).虫垂開口部に粘膜病変はみられなかった.

大腸内視鏡検査所見(2年前,2019年):直腸から横行結腸までは2016年の所見と同様にMES1の所見であり,上行結腸は正常粘膜であった.虫垂開口部と考えられる部位に陥凹を伴う平坦隆起性病変がみられ,粘膜は顆粒状を呈し中央部には小さな白苔がみられた(Figure 2-a).

Figure 2 

a:大腸内視鏡検査所見(2年前,2019年).虫垂開口部と考えられる部位に陥凹を伴う平坦隆起性病変がみられ,粘膜は顆粒状を呈し中央部には小さな白苔がみられた.

b:生検組織所見(2年前,2019年).粘膜固有層にびまん性の炎症性細胞浸潤がみられたが,陰窩の配列は保たれ,杯細胞の減少がみられた.腫瘍性病変はみられなかった.

生検組織所見(2年前,2019年):盲腸の平坦隆起性病変からの生検組織は,陥凹部の顆粒状粘膜から3個採取された.粘膜固有層にびまん性の炎症細胞浸潤がみられたが,陰窩の配列は保たれ,杯細胞の減少がみられた.いずれの標本にも腫瘍細胞はみられなかった(Figure 2-b).

CT検査所見(2年前,2019年):胃消化管間質腫瘍の術前検査として施行されたCT検査を振り返って見直すと,虫垂根部は壁が全周性に肥厚し1.8×1.4cm大であった(Figure 3).また,虫垂遠位側は1.3×1.2cm大に内腔が拡張していた.

Figure 3 

CT検査所見(2年前,2019年).虫垂根部は壁が全周性に肥厚し1.8×1.4cm大であった(矢印).虫垂遠位側は1.3×1.2cm大に拡張がみられた(矢頭).

大腸内視鏡検査所見(1年前,2020年):盲腸病変は粘膜下腫瘍様の形態を呈したが,白苔を伴う陥凹部は2019年の所見とほぼ同様な顆粒状粘膜であった(Figure 4-a).

Figure 4 

a:大腸内視鏡検査所見(1年前,2020年).盲腸病変は粘膜下腫瘍様の形態を呈したが,白苔を伴う陥凹部は2019年の所見とほぼ同様な顆粒状粘膜であった.

b:生検組織所見(1年前,2020年).粘膜固有層にびまん性の炎症性細胞浸潤がみられたが,腫瘍細胞は確認されなかった.

生検組織所見(1年前,2020年):盲腸病変の陥凹部顆粒状粘膜から採取した2個の生検組織ではびまん性の炎症性細胞浸潤がみられたが,腫瘍細胞は確認されなかった(Figure 4-b).

大腸内視鏡検査所見(精査時,2021年):直腸から横行結腸まで微細顆粒状粘膜がみられ,MES1の所見であった.盲腸に2型腫瘍様の腫瘤がみられ,中央部は白苔を呈していた(Figure 5-a).終末回腸に狭窄や病変はみられなかった.

Figure 5 

a:大腸内視鏡検査所見(精査時,2021年).盲腸に2型腫瘍様の腫瘤がみられ,中央部は白苔を呈していた.

b:生検組織所見(精査時,2021年).腫瘤陥凹部の生検組織では低分化主体の腺癌細胞がみられた.

生検組織所見(精査時,2021年):腫瘤陥凹部の生検組織では低分化主体の腺癌細胞がみられ(Figure 5-b),MIB-1陽性率は80~90%であった.RAS-BRAF遺伝子変異解析では,RAS codon13がG13Dで変異陽性であった.

上部消化管内視鏡検査所見(精査時,2021年):胃穹窿部に手術瘢痕がみられたが,腫瘍性病変はみられなかった.

CT検査所見(精査時,2021年):肝両葉に多発する境界不明瞭な低吸収腫瘤がみられ,造影早期相で辺縁に造影効果がみられた.回盲部内側壁に4×3.5×4.5cm大の不整形腫瘤(Figure 6),腹部大動脈周囲に多数の腫大したリンパ節,骨盤内左側に2×1.5cm大の不整形結節,また左水腎症がみられた.

Figure 6 

CT検査所見(精査時,2021年).回盲部内側壁に4×3.5×4.5cm大の不整形腫瘤がみられた.

経過:内視鏡所見や生検組織所見からは盲腸癌の否定は困難であるが,2019年のCTでは虫垂根部が全周性に肥厚し虫垂遠位側の拡張がみられたこと,2019年と2020年の内視鏡所見や生検組織所見からは癌の盲腸管腔側への浸潤がみられないことから,総合的に判断すると原発巣は虫垂癌と考えられた.原発性虫垂低分化腺癌(cT4bN2bM1c, Stage ⅣC),多発肝転移,多発リンパ節転移,腹膜播種と診断された.腸管狭窄による腸閉塞症状がないことから,左尿管ステントを挿入後にmFOLFOX療法 6が2回施行された.癌巣は急激に進行し,肝転移巣の増大,肺転移巣の出現,左鎖骨上窩リンパ節の腫大がみられ,全身衰弱のため3カ月後に永眠された.

Ⅲ 考  察

原発性虫垂癌はまれな疾患であり,大腸癌手術例の0.2%,剖検例の0.08%を占めている 7.組織型は分化型腺癌,粘液癌,印環細胞癌・低分化腺癌の順に多く,印環細胞癌・低分化腺癌は日本病理学会の病理剖検輯から抽出されたデータでは3.6 %,大腸癌研究会(Japanese Society for Cancer of the Colon and Rectum:JSCCR)の全国登録(JSCCR登録,1974~2004年)では10.1%の頻度であった 7.JSCCR登録(1991~2004年)の予後情報では,粘液癌,分化型腺癌,印環細胞癌・低分化腺癌の5年生存率はそれぞれ70.4%,62.9%,20.0%であり,低分化腺癌・印環細胞癌の予後が他の組織型に比べて際立って不良である 7.原発性虫垂癌は術前診断が困難な場合が多く,急性虫垂炎や回盲部腫瘤の術前診断で手術を受け,術中所見および術後病理組織学的検査で原発性虫垂癌と診断されることが多い 8.また,症状が出現しにくいため早期発見が困難であり,虫垂自体が組織学的に固有筋層と粘膜下層が薄く癌細胞が浸潤しやすいうえにリンパ組織も発達しているため,進行癌で発見されることが多い 9.腫瘍の一部が盲腸内腔に露出した場合は上皮性腫瘍の所見を呈し,露出しない場合は粘膜下腫瘍様となる.そのため原発性虫垂癌の内視鏡像は,粘膜下腫瘍様型,鉢巻きひだ型,隆起型,側方浸潤型の4型に分類されるが 10,術前に大腸内視鏡検査での生検にて原発性虫垂癌の確定診断が得られたのは31.5%と報告されている 11.無症状で発見された早期虫垂癌でPET-CT検査 12),13が有用とする報告がみられるが,成人の正常虫垂においても18F-FDGの異常集積がみられることがあり 14,画像解析のうえで注意が必要である.

本例では,以前より炎症の評価とサーベイランスのため大腸内視鏡検査が施行されていた.組織学的に確定診断が得られる2年前から,虫垂開口部には粘膜の変化がみられ病変が出現していたが,盲腸側への癌の露出がないため生検では悪性所見が得られなかった.UCの虫垂開口部病変においては,慢性虫垂炎や虫垂癌の二次的な粘膜病変などが鑑別診断にあげられる.特に陰窩炎や陰窩膿瘍などのUC活動期の組織像がみられない場合は注意が必要である.虫垂開口部の炎症性病変として経過観察となったが,短期間頻回の再検査や他の画像検査が施行されていれば,異なった臨床経過を辿った可能性があり,反省すべき点と考えられる.

UCに合併した虫垂癌は非常にまれである.1980~2023年の期間で,医学中央雑誌で「潰瘍性大腸炎,虫垂癌」で検索したところ,4編の原著論文 15)~18がみられた.また,同じ期間内でPubMedを「ulcerative colitis, appendiceal adenocarcinoma」または「ulcerative colitis, appendix, adenocarcinoma」で検索したところ9編 5),19)~26の報告がみられた(Table 1).有症状例は11例であるが,腫瘍と内視鏡診断されたのは2例,生検での診断確定は1例のみであり,多くは切除標本で診断されていた.術前に確定診断することの困難性が窺える.組織学的にdysplasiaが確認されCACと考えられた虫垂癌は2例のみ 21),24であり,多くは非炎症性のSAと考えられている.

Table 1 

潰瘍性大腸炎に合併した虫垂癌の報告例.

CACの危険因子は,長期にわたる罹病期間,広範囲にわたる罹患範囲,大腸癌の家族歴,組織学的炎症の重症度および原発性硬化性胆管炎の合併である 27.本例では上行結腸より近位側は罹患範囲外であった.また,本例では手術や剖検による病理組織学的な検査は施行されていないが,内視鏡観察ではdysplasiaの出現はなく,CACではない非炎症性のSAが考慮される.CACではKRAS変異がSAよりも有意に低い率で検出されることが報告されている 28.非炎症性の発癌経路はKRASによって特徴付けられるが,本例ではKRAS G13D突然変異がみられており,どちらかといえば非炎症性の発癌経路の可能性が考えられた.

Ⅳ 結  語

UCに合併した虫垂低分化腺癌の極めてまれな1例を経験した.UCの経過中に虫垂開口部に粘膜病変がみられた場合は,虫垂癌による二次的な変化や慢性虫垂炎との鑑別が重要である.鑑別ができない場合は,虫垂癌を念頭においた他の画像検査による評価や手術介入について検討が必要である.

謝 辞

本例の化学療法を担当していただいた,当院がん化学療法科加藤誠之先生に深謝いたします.

 

本論文内容に関連する著者の利益相反:なし

文 献
 
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