2025 Volume 67 Issue 8 Pages 1361-1366
内視鏡的胆管ステント留置術後のステント逸脱による十二指腸乳頭口側隆起部穿孔は稀である.2021-2023年に当院で内視鏡的胆道ドレナージを施行し,十二指腸乳頭部穿孔をきたした9症例に対して臨床的検討を行った.原疾患は総胆管結石が6例と最多で,全例にストレート型プラスチックステントを留置していた.ステントによる乳頭部穿孔に対しては,全例乳頭開口部側から慎重に抜去し,治療を継続できた.抜去に伴う偶発症は認めなかった.胆管ステント逸脱による十二指腸乳頭部穿孔は安全に治療できたが,後腹膜穿孔の場合は重篤化の可能性があるため,適切なステント選択と長期留置の回避が必要である.
Perforation of a biliary plastic stent through oral protrusion of the duodenal papillae is a rare complication of ERCP. We investigated the clinical characteristics and outcomes of nine cases of patients with duodenal papillary perforation, post endoscopic biliary drainage (EBD), at our hospital between 2021 and 2023. The most common primary disease was common bile duct stones (six patients), and all patients underwent EBD with a plastic stent (straight type). In all patients, the stent was removed from the orifice side using grasping forceps when there was duodenal papillary perforation of the biliary stent, and treatment could be continued. None of the patients had any complications associated with the removal of the stent. Although it is possible to safely treat patients with duodenal papillary perforation of the biliary stent, retroperitoneal perforation may cause more severe complications. Therefore, appropriate stent selection and avoidance of long-term implantation are necessary.
急性胆管炎はTokyo guidelines 2018(TG18)に従って重症度を判定し,胆管ドレナージを行う 1).胆管ドレナージは内視鏡的逆行性胆管膵管造影法(ERCP)が他のドレナージより低侵襲で推奨されているが 2),ERCP後膵炎を始め偶発症が多く報告されている.ステント穿孔の報告も散見されるが 3),十二指腸乳頭を胆管ステントが穿孔する偶発症は国内外含め報告は2件のみである 4),5).胆管ステントの乳頭部穿孔は,経乳頭的に留置したステントが逸脱し,近位側が十二指腸乳頭の口側隆起を串刺しにする形で十二指腸内腔に脱出している状態として報告されている 4),5).今回当院で胆管ステントの乳頭部穿孔をきたした症例を9症例経験したため,検討を行った.
2021年4月から2023年3月までの間に当院で内視鏡的胆道ドレナージ(endoscopic biliary drainage:EBD)を施行した305症例のうち,胆管ステントの乳頭部穿孔を認めた9症例(3.0%)を対象とした.乳頭部穿孔は「経乳頭的に留置した胆管プラスチックステントが逸脱し,近位側が胆管末端のnarrow distal segment(NDS)を貫いて十二指腸の口側隆起から十二指腸内腔に脱出している状態」と定義した.乳頭部穿孔のシェーマをFigure 1に示す.乳頭部穿孔の確認はERCP中の上記内視鏡所見をもって行った.後腹膜腔への穿孔に関しては胆管造影での造影剤漏出の有無から判断した.急性胆管炎の診断はTG18に準じて行った 1).各原疾患はCTや磁気共鳴胆管膵管造影(magnetic resonance cholangiopancreatography:MRCP),ERCPの所見,また病理組織学的所見より診断を行った.臨床経過や検査所見を参照し,臨床的特徴を後方視的に検討した.検討した因子において,十二指腸乳頭の位置を評価するため,ERCP施行中のX線像で乳頭から下十二指腸角(Inferior duodenal angulus:IDA)屈曲部との距離を測定し,「乳頭〜IDA距離」とした.「口側隆起サイズ」は使用したMTWカテーテル先端の青色マーカー(6.0mm長)を目安に計測を行い,10mm未満を「小」,10mm以上を「大」とした.「総胆管径」は初回ERCP前のCTにおける総胆管の最大内径を測定した.左右肝管合流部下縁から十二指腸壁に貫入するまでを二等分した部位を肝門部領域胆管と遠位胆管の境界とし 6),その境界の正中から測定した遠位胆管から肝門部胆管の屈曲する角度を「胆管屈曲角度」に示した.

胆管ステントの十二指腸乳頭部穿孔のシェーマ.
自験例9例の臨床的特徴をTable 1,総胆管結石(症例2)とレンメル症候群(症例3)における内視鏡所見をFigure 2に示す.平均年齢は82.6 ±8.2歳.性別は男性4人,女性が5人,平均体重指数(BMI)は23.0±4.9であった.原疾患は総胆管結石が6例,良性胆管狭窄(成因不明)が1例,レンメル症候群が1例,十二指腸乳頭部癌が1例であった.ERCPの既往のある症例が3例いるが,内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)の既往は1例のみであった.初回のERCPでは8例が胆管炎を併発しており,1例はステント交換が目的であった.初回のERCP所見において,十二指腸乳頭からIDAまでの距離は平均12.9mmであり,いずれも下行脚にあるものの水平脚に近い位置に乳頭がある症例が多かった.口側隆起のサイズはいずれも10mmを超えており,小サイズの症例は認めなかった.傍乳頭憩室はレンメル症候群の症例3のみであった.総胆管径は平均13.9mmであり,8症例が胆道閉塞を伴う症例であることもあり胆管拡張の強い症例が多かった.胆管屈曲角度は5症例が30°を超えており,屈曲・蛇行を伴う症例が多かった.全例ストレート型,7Frのプラスチックステント(QuickPlace VTM,Olympus社)でEBDを施行した.2症例では膵管ステント留置術(endoscopic pancreatic stenting:EPS)も行った.ステント留置期間は平均90.3±49.3日でERCPの再治療を行った.最短の留置期間は19日で,胆管炎を再燃したため再治療が行われた.2症例のみステント脱落が疑われERCPを施行しており,その他は待機的治療であった.胆管炎をきたした症例は1症例のみで,多くは無症状であった.ERCP再治療の際にいずれもプラスチックステントが十二指腸乳頭の口側隆起部に穿孔しており,全例乳頭開口部側から把持鉗子で抜去し,胆管造影で造影剤の漏出がないことを確認した.6症例は2期的に治療を行い,そのうち4症例でピッグテール型のステントに変更し,2症例はサイズアップ(8.5Fr)を行った.その後ERCP再治療を行い,EST/結石除去など原因除去を行い,ステントフリーとした.3症例は1期的に治療を行い,総胆管結石2症例に対してEST/結石除去,十二指腸乳頭部癌に対してはフルカバー自己拡張型金属ステント(fully covered self-expandable metal stent: FCSEMS)留置を行った.全症例いずれも偶発症は認めなかった.

胆管ステントの乳頭部穿孔をきたした症例の臨床的特徴.

胆管ステントの十二指腸乳頭部穿孔をきたした症例の内視鏡所見.
a:総胆管結石における乳頭部穿孔(症例2).
b:レンメル症候群における乳頭部穿孔(症例3).
以下にFCSEMS留置にて一期的に治療を行った症例を提示する.
症例6:75歳,女性.
主訴は発熱,黄疸.パーキンソン病のため当院神経内科通院中.2022年9月発熱,体動困難のため当院に搬送された.血液検査で黄疸を認め,腹部造影CT検査とMRCPで胆管と膵管の拡張を認めた(Figure 3-a).ERCPを行い十二指腸乳頭に粘膜の不整,硬化を伴い,膵管ガイドワイヤー法でEBD・EPSを施行した(Figure 3-b~d).十二指腸乳頭から生検を行い,adenocarcinomaの病理診断から十二指腸乳頭部癌の臨床診断となった.黄疸の改善後,2022年12月にステント交換のため再入院し,ERCPを施行した.膵管ステントは脱落し,胆管ステントは乳頭口側隆起部に穿孔していた(Figure 3-e).乳頭開口部側から把持鉗子でステントを抜去し,胆管造影で造影剤の漏出がないことを確認し,FCSEMS(full covered type,10mm径,60mm長,Niti-S biliary stent,Century Medical社製)を留置した(Figure 3-f).ERCP後は偶発症なく,術後8日目に退院となった.

十二指腸乳頭部癌における胆管ステントの乳頭部穿孔の症例(症例6).
a:初診時のMRCP所見.胆管と膵管の拡張を認める.
b:初回ERCP時の内視鏡所見.十二指腸乳頭部に粘膜の不整,硬化像を認める.
c:初回ERCP時の胆管造影所見.十二指腸乳頭とIDAの距離は9.7mmと短く,総胆管径は19.3mmと拡張を認める.胆管の屈曲は21°と蛇行は強くなかった.
d:EBD・EPSを施行時の内視鏡所見.
e:ERCP再治療時の内視鏡所見.胆管ステントが乳頭部穿孔をきたしている.
f:胆管ステントの抜去とFCSEMS留置時の所見.
胆管ステントの乳頭部穿孔は極めて稀なEBD後の偶発症であり,国内外含め2症例しか報告は見られない 4),5).いずれも総胆管結石性胆管炎に対して,EST後にサイドフラップ付きのプラスチックステントを留置しEBDを行っており,3カ月後の再治療時に乳頭部穿孔が確認されている.原因に関して,滞留した遺残結石により十二指腸側に瘻孔を形成しステントが逸脱すること 4),逸脱したステントがサイドフラップの部位で乳頭に引っかかり穿孔に至ることなどが挙げられている 5).自験例においても総胆管結石が6症例と最も多かったが,レンメル症候群,下部胆管狭窄(成因不明),十二指腸乳頭部癌においてもステントの乳頭部穿孔をきたしており,原因としては前者の結石による瘻孔よりは,後者の胆管ステントの逸脱から,サイドフラップの乳頭部への引っかかりが生じ,十二指腸の蠕動により牽引や押し上げから乳頭部口側への穿孔をきたすことが有力であるように考えられる.
今回の検討におけるステントの乳頭部穿孔の患者側因子として,平均年齢が82.6歳と高齢であり,総胆管結石の症例が多かった.ERCPの既往は3症例に認めたが,ESTを行われた症例は1症例のみであった.十二指腸乳頭や胆管の特徴として,乳頭の位置はIDAに近い症例が多く,乳頭の口側隆起は10mmを超える症例を多く認めた.胆管は拡張・蛇行を伴う症例が多かった.乳頭部穿孔の要因として,ステントの近位側が乳頭部に引っかかり,十二指腸の蠕動により後腹膜を介さず口側隆起に穿孔する特徴から,解剖学的要因として口側隆起が大きくNDSが長い症例,未処置~小切開の乳頭,乳頭から対側の十二指腸壁との距離が近い症例で起きやすい偶発症と思われる.使用したステントは,全例ストレート型,7Frであった.Yuanらによる胆管プラスチックステントの逸脱・十二指腸損傷を検討した報告では,良性胆管狭窄,狭窄部より肝側のステント先端までの長さが2cm以上,ステント留置期間が3カ月未満であった症例が逸脱のリスクとして挙げられ,ステントの径や長さは有意な因子ではなかった 7).乳頭部穿孔の機序や特徴から,ストレート型ステントは乳頭部穿孔のリスクになると考えられる.
乳頭部穿孔は1症例では短期間で胆管炎を伴い発症したが,その他の8症例は1カ月以上無症状で,ERCP再治療時に発見された.短期間で発症した症例8は,胆管炎再燃時のCTで胆管ステントの逸脱・乳頭部穿孔とともに胆管結石が膵内胆管に残存しており,乳頭部穿孔より総胆管結石嵌頓が胆管炎の原因のように思われる.その後の治療においても,乳頭部穿孔をきたしたステントを抜去しても全症例で偶発症なく治療を完遂できたことから,乳頭部穿孔の多くはステントを抜去し治療継続可能と思われるが,後腹膜穿孔を併発しないよう慎重な対応が必要である.
対策として他の形状のステントを使用すること,早期に原因を除去しステントフリーにすることなどが挙げられる.Paspatisらは治療困難な胆管結石症例に対して,ストレート型とピッグテール型ステントにおける逸脱の比較を報告している 8).6カ月以内にステント抜去/交換を要した症例においては両群に逸脱の割合に差は認めなかったが,6カ月以上の長期留置を行った症例も含めた全体の比較において,ピッグテール型がストレート型より有意に逸脱が多かった 8).また,ピッグテール型ステントは先端がループ形状になっていることから,ストレート型ステントよりも逸脱による腸管穿孔などの二次性合併症の報告は少ないと考えられている 8),9).そのため,今回の検討における乳頭部穿孔においても,ピッグテール型ステントを使用することでリスクを低減できる可能性があるが,長期留置による逸脱の有害事象自体は多く認めることに注意が必要である.また,ピッグテール型ステントによるEBDにおいても胆道出血などの偶発症を認めることがあり 10),ステントや乳頭の形態に関わらず偶発症のリスクはある.ストレート型ステントは留置手技が比較的容易であるため,急性胆管炎で全身状態が不安定な患者の緊急ERCPにおいて,ドレナージ目的に使用しやすいメリットもある.症例ごとに留置するステントを適切に選択し,安易に長期留置の選択をしない意識が必要である.
胆管ステントの乳頭部穿孔は稀な偶発症であるが,初回治療時にステントの適切な選択や早期治療を行うことにより予防できる可能性がある.ステントの抜去を行い胆管造影で後腹膜穿孔がなければ,安全な治療は可能と考えられる.本検討は症例シリーズ研究であるため,さらなる症例の蓄積と比較対照を含めた観察研究が必要である.
本論文内容に関連する著者の利益相反:なし