源流
Print ISSN : 1345-3610
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生命における非対称性の役割と遺伝子
土居 洋文
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1999 年 1999 巻 1 号 p. 1-4

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抄録
自然界では「非対称性が機能を生み出す」との基本的考えに立脚して、「生命における非対称性の役割」という観点からプロジェクトを進めている。非対称な細胞分裂だけでなく、特に、染色体DNA、中心粒、文字列がもつそれぞれの非対称性に注目している。例えば、2本鎖DNAには複製時に連続鎖、不連続鎖の非対称性があるが、連続鎖を合成するDNA合成酵素はDNA伸長が良く、不連続鎖を合成するDNA合成酵素は読み止まりが多いと考えられ、これらDNA合成酵素の性格をアミノ酸配列(文字列)の非対称性から探ろう、と試みている。また、染色体DNAや中心粒は半保存的複製を行う。すなわち、時間の観点からすればこれらは新旧の非対称性を持っており、1回1回の細胞分裂が非常に重要であることを意味する。そこでマウス初期発生において胚盤胞期まで1回1回の細胞分裂による遺伝子発現の変化を捕らえることを試みている。さらには、出芽という非対称分裂を行う出芽酵母菌を使って、1回1回の非対称分裂の後にくる細胞老化を、ゲノムレベルからDNAアレイを用いて進めている。
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© 1999
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