抄録
I. 材料として東京, 京都, 大阪市の小學兒童中の双生兒303組及び京阪神居住の一般家族796人を用ゐた。
II. 指紋の分類方法としては指毎に型の上より弓状紋, 甲種蹄状紋, 乙種蹄状紋, 渦状紋, 混合紋の五種に分つ方法と Bonnevie の脈數並びに紋の形に據る方法を採用した。
III. 一卵性の双生兒間の全指又は左右手別に取つた脈數の相關値は同一兒の左右手間の相關値にほぼ等しく0.9内外である。之に反して二卵性双胎兒に於ては同一人の左右手間の相關値は0.9に近きも, 同組兩兒の同側の兩手間又は全指に就ての相關値は0.4に過ぎない。
IV. 指紋の脈數の決定には優劣の關係にあらざる同義因子が關與してをる事を示すと共に, 伴性因子が關與して居る樣に思はれる。
V. 指紋の型は遺傳される傾向があるが, 其樣式は明瞭でない。
VI. 甲種蹄状紋を作る傾向は遺傳的と見るべき證據はない。
VII. 指紋の旋廻の傾向及び高さに就ては遺傳の傾向ある事は見られるが, 其樣式は明かでない。