抄録
第1報に於いては五倍小麥雜種 Triticum polomcum (2n=28)×T. spelta (2n=42) の戻雜種及びF2を用ひて, 染色體數と密接な關係ある二三の形態學的形質の遺傳を研究し, それ等に對する因子はDゲノムの染色體に存することを確めた。今囘は同一材料並びにそのF3に於いて, 芒の有無•稈節の毛•苞穎の毛及び外穎と内穎との長さの差の遺傳現象を究めた。これ等の各形質は孰れも單因子雜種の分離比を示し, 染色體數と無關係に遺傳するから, A又はBゲノムの染色體上に夫々の因子座を占めるものである。
無芒因子Nと稈節の有毛因子 Hn との間にのみ約28.5%の聯關を發見し, F3に於いてもこれを確めた。T. polonicum は外穎が内穎より著しく長い。これはこの種に特有な因子Pによるもので, この因子は又芒の長さ及び苞穎の毛の長さをホモの状態に於いて抑制する。即ちP因子は多面的發現作用 (Pleiotrope Wirkung) を有する。