遺伝学雑誌
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小麦とカモジグサの属間雑種に関する細胞遺伝学的研究
第1報 Triticum vulgare Vill.×Agropyron glaucum Roem. et Schult. より得たる F1 の染色体の行動と形態
渡辺 好郎百足 幸一郎
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1957 年 32 巻 4 号 p. 136-145

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抄録

1. 普通小麦の栽培品種4と育成複二倍体 Timopheevi-squarrosa (AAGGDD)を母とし, これに A. glaucum Roem. et Schult. の花粉を配して各組合せより夫々若干個体のF1を得たが, 授粉小花数に対する雑種生成歩合は組合せにより著しい相違を示した.
2. MI における染色体接合型とその頻度もまた組合せにより著しく相違し, 二価染色体総数でいつてモードが10附近にある組合せ (赤皮赤とのF1)と, それより低い所にモードを有する組合せ (フルツ1号及び AAGGDD とのF1) 及び逆に高い所にモードを有する組合せ (本育49号及びヒラキ小麦とのF1) と3群に大別された (第2表及び第3図). 一価染色体も甚だ多く観察され, 多価染色体は四価迄みられた.
3. 普通小麦とカモジグサとは少くとも1個のゲノムを共有していることが確められた.
4. F1 は完全自殖不稔を示したが, Vulgare の栽培品種で戻交雑して若干の BF1 種子が得られた.
5. 外部形態的には花粉親たるカモジグサの形質が強く現われ多年性となる. 耐病, 耐旱, 耐寒, 耐雪性強く, 特に分蘖能力著しく牧草として有望視される.

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