遺伝学雑誌
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MTK-IV腫瘍細胞における分葉核形成に関する二三の実験
久田 洋子
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1957 年 32 巻 5 号 p. 172-177

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抄録
シロネズミの腹水腫瘍 MTK-IV において腫瘍細胞1個及び9個移植並びに化学薬品処理の三実験を行い, 各累代移植世代における分葉核細胞の出現頻度の変化を調査した. その結果, 累代移植世代1代においては正常の腫瘍の分葉核細胞の出現頻度10~30%に比較して, 1個細胞移植においては2~3倍, 9個細胞移植3~4倍, 薬品処理約2倍の高率を示した. これらの細胞は各累代移植世代を経るにつれて減少の傾向を示し, 20代 (1個細胞移植), 43代 (9個細胞移植), 7代(薬品処理)において正常の出現頻度に復した. 以上の結果より, MTK-IV 腫瘍の腫瘍細胞は外界条件の悪化, 又は他の原因で分裂増殖が困難な状態になつた時に分葉を形成しやすくなるということが推論される.
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