抄録
ギョウジャニンニク Allium victorialis L.subsp. platyphyllum Hultén の蕾をドクゼリ Cicuta Virosa L. の水抽出液 (100ccの蒸溜水中に生体量10gを浸けたもの) にて, 3時間, 4時間および20時間の処理をほどこし, 直ちに水洗後花粉母細胞の分裂の異常を観察した。
観察の結果, この水抽出液のおよぼす影響で最も顕著な現象は, 分裂の中期および後期にみられる染色体の粘着現象であった。
そのほか, 第1後期, 第2後期での染色体橋の形成, 遅滞染色体や断片の出現, 中間期の核における著しい空胞化および分裂中期での染色体の膨潤などがあげられる。
ドクゼリの水抽出液は分裂細胞, 特に分裂中期の細胞に強く作用し, 核分裂を抑制して以後の分裂行動に対して種々な異常を生ぜしめるものと考えられる。