遺伝学雑誌
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茄に於ける異品種交配の實驗
永井 計三喜田 茂一郎
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1927 年 4 巻 1 号 p. 10-30

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抄録

以上説述せる茄雜種の特質を摘録すれば、次の如し。
(1) 雜種第一代は生育迅速にして張健なり。即「ヘテローシス」の現象を呈す。而し其程度は兩親の組合せ如何により、區々たり。
(2) 「ヘテローシス」に影響さるる形質は、收量、顆數、開花始、採收始、株高、株擴、枝數、蒂刺數及顆長顆徑にして、青枯病に對する抵抗性は不明なり。即收量及顆數は著しく増加し、開花期は少しく、又株收期は非常に早まり、株高、株擴、株數、蒂刺數及顆長は少しく増加し顆徑は少しく減少するものなり。
(3) 第一蕾附着節、葉長、葉幅等は、「ヘテローシス」の影響を受けずして何れも、兩親の平均値とF1の値と略一致するも、葉長及葉幅は少しく減少する傾向を示せり。
(4) 「ヘテローシス」はF1に最も著しく、代を重ぬるに從ひ、漸次其程度を減ず。
(5) 「ヘラローシス」を實用化して、優良なるF1種子を栽培に供する事は有利なり。其際大顆種を母株とするを得れば、容易且安全に多量の採種を爲す事を得ん。
(6) 顆色、蒂の刺數、顆長、顆徑及顆形等の諸形質につきて、遺傳現象を究めんとし、F3に至るまで處理を行ひたり。然るに其結果は甚だ複雜にして此等諸形質を支配する因子の分解を正確に行ふことを得ざりき、此れに依つて見れば、前記諸形質は多數因子に依つて支配せらるゝこと明なり。從而雜種の後代に於て此等多數因子の結合に基く新型の出現も亦疑を容れず。之茄の雜種に依る新種育成の可能を立證するものと謂ふべし。(大正十四年三月二十日脱稿)

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