1933 年 8 巻 4 号 p. 239-244
以上の實驗結果から大體下の樣な事が解る。
(1) 子房が花粉の刺戟を受けて無種子果實を結ぶ時には花粉管が花柱内を容易に伸びて行くに反し、無種子果實の出來ぬ時には花粉管の生長が貧弱である。
(2) カボチヤの實驗は、未だその點迄進んで居らぬが、ナスの實驗によると、此の花粉管生長に遲速の差を生ずるのは、花柱内にある特殊物質の影響で、其の物質は主として子房内で出來て、花柱へ昇つて行くものと考へられる。
(3) 此の特殊物質と、自家不和合の場合に於ける自家の花粉管の生長を抑制する物質とは、其の性質及び出來方が甚だよく似て居る。これ等兩者の關係如何と云ふ事は面白い研究問題である。