損害保険研究
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Print ISSN : 0287-6337
<研究論文>
日本版MaaSにおける自動運転事故とサイバーセキュリティ
肥塚 肇雄
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2021 年 82 巻 4 号 p. 1-37

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抄録

国土交通省・自動運転における損害賠償責任に関する研究会「報告書」(2018年3月)は,政府の「自動運転に係る制度整備大綱」(2018年4月17日)に反映される等して関係法令の改正指針となった。実際に,道路運送車両法および道路交通法は改正・施行された。しかし科学技術の進展は目覚ましく,新しい概念が社会に普及した。それが人の「移動」をサービスの観点から捉えたMaaS(Mobility as a Service)という概念である。MaaSは今の時代が大量生産大量消費社会からサービス社会へと移行していく転換期であることを示している。MaaSの構築は,各交通事業者のデータ基盤がAPIにより連携されて可能となる。上記「報告書」では,2025年頃の高度自動運転システムの過渡期が想定されていたが,MaaS構築後の自動運転の責任関係については検討されていない。自動運転車はデータ連携基盤等と常時通信して自動走行する。このため,自動運転車は自動走行の際,サイバー攻撃のリスクにさらされる。このような自動運転車は目に見えない「軌道」を走行するに等しく,自賠法にいう「自動車」(2条1項)に該当せず,運行供用者(3条)も存在しない。したがって自動運転事故には自賠法は適用されない。そのため被害者救済の方策を新たに講じる必要がある。その一つが自動運転事故「災害保険」構想である。

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