鉱物学雜誌
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鉱物の相転移:一般的展望
中平 光興
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1965 年 7 巻 5 号 p. 305-312

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抄録
 天然に産するいろいろの高温型あるいは低温型の鉱物を眺める場合,鉱物学者はそれらの安定な温度範囲をきめることに興味をもち,地質学者はそれらを地質学的温度計として利用する。ところが非常に多くの場合,上述の熱力学的な平衡の問題がいろいろの要因からくるKineticな問題とからみ合っていて,われわれの観測事実の解釈にさまざまな困難をもたらす。実際,天然の鉱物を扱う場合,なんらかの現象の解釈のためにも,われわれにとって未知の要素が非常に多く,その解釈の妥当性に自分で不安を感じることがしばしばある。こうした不安からのがれる一つのアプローチは,最近次第に発達している鉱物合成の分野にある。純粋あるいはなんらかの不純物を含むものとをとわず,よく特徴づけられている物質についての実験,考察はやがては未知の要素を含む物質の性質の理解に役立つにちがいない。この意味でここではそうしたよくわかっている簡単な物質について,相転移という現象をどうながめ,どんな問題が含まれているか,あるいはどんな研究方法が開拓され得るかを考えてみる。
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© 日本鉱物科学会
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