抄録
T.L. Smithによって提唱された方法を多少修正変形することにより, 加硫ゴムの破断挙動のひずみ速度および温度依存性を一般的に記述する方法を見出す目的をもって, 先ずSBR純ゴム配合加硫物についてSmithの実験を追試し, 一般的傾向や実験精度についてほぼ同じ結果がえられることを確かめた.次に破断挙動に対して時間温度換算則を適用してえられる移動因子, log aTは, 線型粘弾性測定によってえられるそれと同じものであるという見地から, 後者の方法による高精度のデータを別に求めて使用することを提案した.また破断に要する力を破断時の試片の断面積で除したものが変形前の断面積で除したものよりも真の破断応力により近いとし, この破断応力と上述のlog aTとによって一般に合成曲線がえられることを実験的に示した.
次に破断ひずみについては, log aTによるいわば横軸シフトの他に縦軸シフトを新に導入すれば合成曲線がえられることを実験的に示し, その際えられる移動因子, log bTを温度の関数として求めた.
最後に, Smithのいわゆる破断包絡線 (failure envelope) は本質的には弾性応力の非線型性に関する物質関数と解すべきものであって, 破断挙動に関するそれとしてはいまのところ破断ひずみおよびlog bTをもってするのが合理的であることを示した.