ゴムの二重結合に立体障害の大きい化合物を付加させることにより, ゴムの力学的性質を変えることを目的として, サリゲニンをゴムに反応させた. ゴムとトルエン溶液にサリゲニンを添加し, 封管中窒素ふんい気下180°Cで反応を行なった. 反応物について, 元素分析からサリゲニンの結合量を求め, 赤外分析からミクロ構造の変化を検討した. また変性ゴム加硫物について, 動的特性の温度依存性ならびに引張特性を調べた.
実験の結果, サリゲニンはNRに対してほとんど100%反応し, その結合量に比例してゴムの転移点が高温側にシフトし, 引張応力が大きくなることがわかった. BRに対しては, NRと同様に, シスからトランスへの異性化は認められないが, サリゲニンの反応性が低く, ゴムの転移点を変化させる効果がほとんどなく, ゴムをゲル化させる傾向が強かった. また, サリゲニン処理によりゴムの結晶化が妨害されることが認められた.