日本ゴム協会誌
Print ISSN : 0029-022X
ポリイソプレンのミクロ構造と諸性質との関係
高分子の構造と物性に関する研究(第1報)
桑原 豊石川 克広小谷 悌三
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1972 年 45 巻 7 号 p. 701-708

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抄録

ポリイソプレン (以下IRと略す) のミクロ構造と物理的挙動との関係を調べるために, 平均分子量, 分子量分布をできるだけ一定にし, ミクロ構造のみを変化させたIRを合成した.また, 網目問鎖数濃度を実用範囲にはいるようにそのIRを架橋し, 諸物性とミクロ構造との関係を検討した.
その結果, (1) IRのガラス化温度は Wolstenholm の式でうまくミクロ構造と結びつけられた. (2) 転移領域における緩和弾性率の時間依存性の形状はほぼ同じであり, ガラス化温度の移動量 (ΔTg) は移動因子に影響し, これら試料の移動因子は WLF 式で記述される. (3) ゴム状領域での貯蔵弾性率, (E' (ω)) はミクロ構造に関係なく, 網目間鎖数濃度に依存する. (4) ゴム状領域での損失弾性率, 損失正接はシス含量の減少にしたがって増加した.(5) ゴム状領域での緩和スペクトルを Aθ-m と近似すると, 定数mはシス含量の減少とともに増大した.(6) 破断伸びが最大になる温度 Tmax はシス含量の低下と共に 100℃ から-40℃ まで移動した. (7) 最大破断伸びおよび応力-複屈折より求めた分子鎖のかたさの尺度 Z はシス含量の減少とともに大きくなり, 特に 3, 4-構造の影響が大きい. (8) mの増大, Tmax の減少は製品寿命を縮め, 損失正接の増大は発熱量を大きくし, 最大伸びの減少は製品性能を悪くする方に結びつくので, タイヤ材料などに用いる場合には低シス形よりも高シス形の方が望ましいことなどが推論された。特にトラック・バス用トレットゴムにはシス形が望ましいといえよう.

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