抄録
(1) 武藏野臺地西部はローム層の下の砂礫居に滯水して本水と呼ばれる地下水をなす。地下水面が低下する時,砂礫層に局部的に挾まれる薄い粘土層のある西北部では地下水は一部が殘存して宙水状の上部本水となる。この外ローム層粘土質化した下部層の所に局部的に湛水して宙水をなしてゐる所もある。東部では地下水は砂礫暦を充し盡し,ローム層下部の粘土層が稍厚い所ではローム層の中迄滯水する。砂礫層の下の厚い粘土層以深の諸帶水層に含まれる被壓水は少數の穿井によつてのみ取水されてゐる。
(2) 昭和13年春には著しく水位が低下し北部武藏野の深井特に上部本井戸は渇水したものが少くない。3種の地下水の地表下の深さ及び地下水面等高線の分布圖を作製した。地下水面の深さは宙水區を除き東部武藏野では5~15m,北部武藏野では15~25mに達する。
(3) 昭和13年6月28日~7月4日の600mmに及ぶ豪雨によつて地下水位の上昇が甚だ著しく時に地表に溢れ野水となつた。地下水位の上昇は3~12mに及び北武藏野に著しかつた。その爲中部及下部本水は連續して水深の大きい井戸となつた。野水は淺い排水の惡い谷頭や地形が平坦な所でも宙水地域に著しかつた。