地理学評論
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広島市の冬季気温に及ぼす建築物の影響
設楽 寛
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1957 年 30 巻 6 号 p. 468-482

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抄録

両日にわたる観測結果を要約すると,次のごとくである.1)移動観測値の時差補正には合理性を期し,安定値および連続の概念を導入した.気温の分布については,常識的に等値線を入れることを避け,都市.の物質景観や水陸分布風等との関連についで解析し,分布法則を求めた上で分布図を作製した.2)夜:北風が河沿いに発達したため,各河川気温は同温となる傾向があり,この風がWの成分を含み,また河川気温が割に温暖であつたために,左岸気温は河川気温と等しく,非市街地ではここから内陸へと逓減し,東隣河川の右岸に極低温が現れる.この事実から,市内全域が非市街地と仮定した時の気温分布が推定可能で,これと実際の気温との差値が,市街地の熱効果を意味するものである.その分布の最大値を示す地域は,都心八丁堀の石質高層建築街で,2°近い値を示すが,家屋密集木造地区や副次的都心などは,河川と大差ない.3)早暁:市街地相互間の気温差が薄れ,また河川の保温性が相対的に強くなつているので,都心でも高温性は極めて薄弱になつてきている.このことは,人為的熱放出量の時間的経過とも関連が考えられる.4)昼:河川気温が非市街地と同温であつたので,河が埋め立てられたと仮想した時の,気温分布と解することができ,市街の熱効果を直接評価できる.副次的都心が割に高温を呈して,主都心に近似値をとることが,夜の場合と対照的な点で,夜の保温効果と昼の昇温効果との主因子が異ることを示す.

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