抄録
吾妻川流域には浅間山,草津白根山,四阿山,榛名山など,多くの火山が存在する.この火山地域の地形発達について次のような結果を得た.(1) 吾妻川流域は南北に走る古期火山列によって,嬬恋高原と中之条盆地に分けられる.(2) 嬬恋高原においては門貝層の堆積から嬬恋湖成層の堆積時まで,中之条盆地では少くとも中之条湖成層基底礫層の堆積時までは,両者は同一の水系ではなかった.(3) 浅間火山の活動によって,南流していた古吾妻川がせきとめられ,古嬬恋湖が形成された.新たに東から溢流して,吾妻川は流路変更を行い,その結果,嬬恋高原と中彦条盆地が一水系としてつながった.この時期は嬬恋高原の吹久保面,中之条盆地の成田原面の形成期以前である.(4)その後,火山噴出物の堆積と段丘の形成が行われる.(5) 低位段丘の考察から,古期火山列が嬬恋高原,中之条盆地に対して,相対的に隆起していることが推定され,地質学的傾向や水準点変動の傾向と一致する.(6) 嬬恋高原のほぼ中央部,大笹付近の丘陵状の地形は門貝層堆積時から,少くとも嬬恋層堆積時以後まで継続した褶曲運動によって形成された.