地理学評論
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関東地方・中部地方における亜高山帯林のしまがれ現象に関する若干の考察
甲斐 啓子
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1974 年 47 巻 11 号 p. 709-718

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抄録

秩父・甲信国境山地,奥日光山地,赤石山地のしまがれ地域に関する空中写真の判読と現地調査から,その分布・構造・形状・しまがれ地域の植生・土壌の厚さ,さらに偏形樹から推定した卓越風向などの関係について次のような知見が得られた.
1) しまがれ現象の分布は南東~南西向斜面の緩傾斜地・平坦地に多い.これは日射量・蒸発量・卓越風向に関係すると思われる.
2) しまがれは亜高山帯林の針葉樹林中(シラビソ・オオシラビソ)に限られる.
3) 亜高山帯林のある高度は山麓・中腹よりも雲量・濃霧日数・暴風日数が多く雨量が少ない.特に風速は強い.風速が強くなると湿度は小さくなることはしまがれ現象の成因で1つであろう.
4) しまがれ地域の土壌の厚さは地域によって異なるが,一般に薄く4~30cmで, 10cmくらいの厚さのところが最も多い.
5) S寄りの風(春・夏・秋)により,斑状しまがれから弧状さらに波状,帯状しまがれに進行する.
6) 偏形樹から推定した卓越風向と,しまがれの配列・形状・倒木方向・進行(移動)方向とはよく合致する.

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