抄録
社会・経済活動の地域間流動に基づく機能地域の研究事例が,等質地域のそれに比較して相対的に少ないのは,資料の入手が容易でないことの他に,観察される流動パターンがきわめて複雑なため,通常の地図学的分析が困難な場合が少なくないからでもあろう.
本論では,錯綜的様相を呈する名古屋大都市圏の地域間自動車交通流を媒介として,同大都市圏内部の機能地域構造を明らかにするため,自動車OD行列に因子分析を適用した.
その結果,第1因子から第12因子までの各因子に相応し,相互に類似した流入パターンを示す着地域群の区分けが可能となった.そしてこれらの因子に対する因子得点の大きい地域,つまり主要な発地域群が次に明らかになり,これら発地域群と着地域群を連結した12の機能地域が設定された.局地的な社会・経済地域に相当するこれらの機能地域は,部分的に重複しながら名古屋市を主体とする機能地域を中心に,放射状的配置を呈している.