高山帯の砂礫斜面に作用する砂礫の移動プロセスの種類とそれを規定する要因を知るために,北アルプス北部の白馬岳周辺で5ヵ所の強風砂礫地と残雪砂礫地を調査斜面に選び,表面の砂礫にペンキで描いた測線や鉛直に埋設した塩化ビニールチューブから砂礫の移動量を測定した.合わせて,斜面物質の特徴,傾斜,凍結の状態,含水比などを調査した.その結果,砂礫の移動によるペンキ測線の変形の様子は五つの移動パターンに分類できること,各移動パターンのあらわれ方は砂礫地の気候,斜面物質の層相,傾斜などの諸条件と密接に関連すること,さらに各移動パターンは,種類が異なる複数の緩速度の物質移動プロセスが重なり合って作用したものであることが明らかにされた.これらのことは,緩速度の物質移動プロセスのあらわれ方や重なり方が,気候条件だけでなく,営力を受ける斜面の条件によっても異なることを示している.