地理学評論
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能登半島の海成段丘とその変形
太田 陽子平川 一臣
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1979 年 52 巻 4 号 p. 169-189

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抄録

能登半島の海成段丘を調査して,第四紀中・後期における古地理の推移と地殻変動を考察した.能登半島の海成段丘は,高位からT, H, M, Lの4群に大別され,さらにTは7段,Hは4段,Mは3段に細分される.M1面は最も連続的に分布し,貝化石と海進を示す厚い堆積物とを伴う広い面で,最終間氷期の海進(下末吉海進)に形成されたと考えられる.M1面より高位に約10段もの海成段丘があるので,その分布から,能登半島の大部分が更新世中期以降の離水によって生じたものであるとみられる.M1面の旧汀線高度ば北端の110mから南部の20mまで,全体として南下り,富山湾側への緩い低下を伴う傾動が推定される.しかし,半島全体が一つの傾動地塊をなすのではなく,1辺10~20km,それぞれが南下りの傾動を示す数個の小地塊の集合からなっている.M1面とそれより古期の段丘の傾動の量はほぼ等しいので,各地塊の傾動はM1面形成後に活発になったと考えられる.北端部での平均隆起速度は1m/1,000年となる.

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