環境トリチウムをトレーサーにして武蔵野台地を覆う関東ローム層中における土壌水の挙動を明らかにした.調査地点は東京都清瀬市郊外の畑地で,表層約6mを関東ローム層が覆っている.この地点で1976年10月1日と1978年4月5日の2回,深さ0.5m間隔で地表面から深さ6mまで関東ロームを採取し,土壌水を抽出してそのトリチウム濃度を測定した.また,同じ地点における関東ローム層の水分量,固相率,水分特性などを測定した.これらのデータに基づいて,土壌水の水収支とトリチウム収支,ならびにピストン流モデルによるトリチウム・プロファイルを計算した.その結果,以下の結論が得られた. (1) ペンマン法で計算した蒸発散量はほぼ妥当な値である. (2) 地下水洒養量は2.4mm・day-1で,日本の平均1mm・day-1をはるかに上まわる. (3) 吸引力の異なる水分子の間で混合が行なわれている. (4) ローム台地の降雨に対する地下水位のすばやい応答はピストン流モデルで説明できる.