地理学評論
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阿寺断層に沿う第四紀後期の断層変位から推定した地震活動
平野 信一中田 高
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1981 年 54 巻 5 号 p. 231-246

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抄録

中部日本に発達する阿寺断層は第四紀において最も活動的な断層の一つである.断層露頭の詳しい観察や変位した河岸段丘の調査により,この断層に沿って発生する有史以前の地震活動が明らかにされた.
有史以前の地震の時期を決定するための14C年代測定用の数多くの腐植土壌が加子母村小郷の阿寺断層の露頭から得られた.また,地震活動に伴う断層変位量を測定するために,木曾川右岸の坂下地域において河岸段丘の変位量を計測した.地震は断層に沿ってそれぞれ約10,300y. B. P.以前, 7,900y. B. P., 5,500y. B. P.そして1,850y. B. P.に繰り返し発生している.地震の発生間隔は決して等しくなく,先行する地震に伴う変位量にそれぞれの間隔が対応している.断層変位を受けた河岸段丘から得られる平均垂直変位速度は,地震活動に対応する変位量とそれに引き続く地震の発生間隔から0.71m/103年と算出される.また,垂直変位量と左横ずれ変位量は1:5の割合になっている (Sugimura and Matsuda, 1965) ことより,平均左横ずれ変位速度は3.55m/103年と算出される.将来の阿寺断層に沿っての大地震の発生は, Time-predactable recurrence model (Shimazaki and Nakata, 1980) の考えをもとにすれば,約1,000年後に推定される.

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