地理学評論
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北陸地方における農業水利の空間構造
田林 明
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1981 年 54 巻 6 号 p. 295-316

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抄録

北陸地方における三つの扇状地性平野の農業水利の性格の違いを,農業水利の空間構造という概念を用いて検討した.農業水利の空間構造を検出するためには,まず水利施設を中枢とする機能範囲,または水利組織の支配範囲,さらに水利慣行のおよぶ範囲によって水利空間を画定する.これらの水利空間を受益者側から検出してゆき,中枢施設の機能と水利組織の性格によって水利空間を垂直的に組みたて,水利空間の階層的構成体をつくる.これらの階層的構成体の水利の地域単元における集合・配列状態をここでは農業水利の空間構造とよぶ.結果として,黒部川扇状地で検出した農業水利の空間構造が最も統一的構造をもち,高田平野のそれは並列的構造をもち,手取川扇状地の場合はその中位にあることがわかった.灌概施設の改善が進み,水利事情が良くなるにつれて,農業水利の空間構造は並列的なものから統一的なものに移行してゆくと考えられる.

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