地理学評論
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武蔵野台地北部における平地林の利用形態
犬井 正
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1982 年 55 巻 8 号 p. 549-565

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抄録

武蔵野台地の北部には,高度経済成長期前まで,江戸時代から農民によって育成されてきたクヌギ・コナラなどの平地林が広範に分布し,農用林野としての伝統的な利用形態が存続していた.高度経済成長期に,薪などの生活資材の採取が消滅し,平地林の一部は工場用地などに転用された.しかし,その中にあって,上富二区のように現在でもかなりの平地林を残している地域も存在する.これらの地域は, 1970年以降市街化調整区域に指定されたところが多く,都市的土地利用への転用が法的に規制された.特に上富二区においては,農業の再生産資材として落葉を採取するという平地林の利用形態が存続してきたことも,平地林が残存してきた直接的な要因であることがわかった.上富二区は,現在,商品的野菜作物としてのかんしょと根菜類の産地であるが,ここでは多くの農家が堆肥材料のみならず苗床醸熱材として,平地林から供給される落葉を利用している.そこには,耕地と平地林の所有面積に応じた興味深い関係がみられた.

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