地理学評論
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札幌における降雪の化学的性質—とくに海水起源物質濃度の成因について—
鈴木 啓助
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1983 年 56 巻 3 号 p. 171-184

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抄録
札幌において,降雪を採取・分析した結果,次のことが明らかとなった.降雪の多くは酸性傾向にあり,日降水量1mm以上の降雪についての平均pHは4.69である.降雪中に含まれるNa・Cl・Mgの各イオンは,ほとんどが海水起源である.降雪中のNaとClの濃度比は,海水中における濃度比とほぼ一致している. Mgは,海水の飛沫からエアロゾルとして生成される時に,濃縮が起こると考えられる.降雪をもたらす低気圧の位置によって,海水起源の成分の濃度に差がみられ,低気圧の前面に広がる層状の雲からの降雪は,きわめて清浄である.降雪中の海水起源の成分の濃度は,層状の雲によってもたらされたものよりも,対流性の雲によってもたらされた降雪で高く,対流混合層の高さと対流混合の継続時間によって説明することができる.
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