地理学評論
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わが国における脳卒中死亡の地域的パターン
加賀美 雅弘
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1983 年 56 巻 5 号 p. 311-323

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抄録
特定の疾病が他の地域に比べて多発する「疾病地域」には,その疾病についての固有の地域特性が存在するはずである.本稿は,わが国の脳卒中による死亡率が著しく地域差を示す点に着目し,その死亡に関連する地域特性を解明することを目的とした.そこで,まず脳卒中死亡の地域差を地域傾向面を用いて把握し,「疾病地域」を指摘しながら,さらにその要因を冬季の気温を用いて予察した.
その結果, (1) わが国の脳卒中死亡の地域的パターンは,より一般的には東高西低パターンや,東北地方を核とする楕円状パターンとして把握できること, (2) 最も説明量の多い6次の傾向面では,東北地方を突出の中心とする東北日本の楕円状パターンと,瀬戸内海を凹部とする西南日本のパターンが認められたこと, (3) 全国的な地域的パターンと,傾向面からの残差を組み合わせた類型を設定した結果,死亡率の高い類型が山間部,死亡率の低い類型が平野部に分布し,両地域の性格の相違が脳卒中死亡に関与していると判断されたこと, (4) 脳卒中の主要因の1つである冬季の気温を用いて分析した結果,本州以南ではその影響が強いこと,北海道は気候以外の要因によって逆に死亡率が低いこと,などが明らかになった.
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