地理学評論 Ser. A
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ソウル市およびその周辺地域における夏季のヒートアイランドの気候学的考察
朴 恵淑
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1986 年 59 巻 12 号 p. 689-705

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抄録

夏季3ヵ月間行なった移動観測によって,ソウル市およびその周辺地域についてヒートアイランドの特徴を明らかにした.ソウル市のヒートアイランド強度は,晴天日の夜間に最も明瞭に現われ(最大7.1°C), その平均値は3.7°Cである.しかし,曇天および雨天日の昼間の平均値はその1/3に過ぎない.市街地には常に高温域が形成され,天気状態や時間帯の相違による気温の変動量(標準偏差)が小さいが,郊外はその逆となる・風速の増加によって,ヒートアイランド強度は弱まり,気温偏差が正の高温域は風下側の郊外へずれる.ソウル市におけるヒートアイランド消失の臨界風速は約11.8ms-1である.商・工業地および住宅地の面積率が大きい地域は気温偏差が正の高温域で,気温の変動量(標準偏差)が小さいが,農地・緑地や水面などの面積率が大きい地域はその逆となる.非透水性面積比(観測地点付近の0.5km×0.5kmのメッシュの中でアスファルトやコンクリート等に被われる面積の割合)と気温偏差とは正の相関,気温の変動量(標準偏差)とは負の相関をもつ.大気汚染濃度 (SO2) の分布は気温分布とほぼ一致し,両者の相関は非常に高い (r=0.942).

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