1991 年 64 巻 11 号 p. 759-778
鳥取県弓が浜半島における「外浜」浜堤群の形成に関与した,鉄穴流しに由来するとみられる堆積物の役割を論じた.美保湾に面する「外浜」の地形は,より古い他の二帯の浜堤群(「中浜」,「内浜」)と大きく異なり,低平で堤間低地に乏しく,ほとんど砂丘の発達をみない.また「外浜」の表層堆積物の粒度組成と岩石・鉱物組成は,他の二帯のそれらと比較して著しく粗粒で,花崗岩類起源の岩片・鉱物に富むとともに,鑪製鉄の廃棄物である鋲滓粒を多く含む.地表下10mまでの「外浜」堆積物は,海浜の急速な堆積過程を反映して,深さ約6mまでの粗粒堆積物と,その下の数mの厚さの細粒堆積物に二分される.そのいずれにも鉄津粒を含み,「外浜」の堆積物が鉄穴流しと密接な関係をもつことを裏付ける.火山岩類の割合を指標として,「外浜」と「内浜」両浜堤群の堆積物を比較検討した結果,「外浜」の堆積物中における,鉄穴流しによるとみられる堆積物の割合は,少なくとも,全体のおよそ75%に及ぶものと評価された.また,既存地質柱状図と地区別の面積から得た「外浜」浜堤群の堆積物の全土量のうち, 1.3×108m3が,おもに鉄穴流しに由来するとみられた.この値は,日野川流域における既知の鉄穴流しによる廃土量のおよそ半分近くに相当する.