アメリカ合衆国では,多様な人種・民族構成を反映して,一般商業新聞とは異なる民族紙の発行が盛んである.その研究蓄積は社会学,人類学,民族学,ジャーナリズムの分野では大きいが,地理学においては微々たるものに過ぎない.それゆえ日本の地理学者にも馴染みが薄いが,民族紙は複合社会研究に格好の材料を提供しているので,その従来の研究動向を主要民族グループ別に紹介し,地理学のアプローチ方法を考えるための情報提供を行なった.そして,地理学が民族紙の存立基盤をいかに捉えるべきか,その地域的条件をいかに見出すかに言及した.