地理学評論 Ser. A
Online ISSN : 2185-1735
Print ISSN : 0016-7444
ISSN-L : 0016-7444
北上山地の奥地山村集落における世帯の構成とその再生産プロセス
安食 和宏
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 66 巻 3 号 p. 131-150

詳細
抄録

本稿は,奥地山村集落における世帯構成の実態を把握することと,世帯の毒生産プロセスの復元をとおして世帯維持の要因を明らかにすることを試みたものである.事例として岩手県岩泉町の4集落を取り上げた.調査の結果より世帯構成の現況をみると,「同居」または「半同居」世帯を合わせると後継者が存在する世帯が過半数に達する.これら後継者の移動歴を検討してみると,とくに地元雇用機会に乏しい集落では,出稼ぎか一時転出を経てから地元での就労に転換するという事例が数多くみられた.世帯維持の重要な要因は,(1)所有土地(資産)の大きさ,(2)集落内の「連帯意識」,「仲間意識」の存在の2つと考えられる.そして,近隣の雇用機会の多さは,世帯の維持においてあまり決定的な条件ではないと理解された.

著者関連情報
© 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top