1993 年 66 巻 3 号 p. 131-150
本稿は,奥地山村集落における世帯構成の実態を把握することと,世帯の毒生産プロセスの復元をとおして世帯維持の要因を明らかにすることを試みたものである.事例として岩手県岩泉町の4集落を取り上げた.調査の結果より世帯構成の現況をみると,「同居」または「半同居」世帯を合わせると後継者が存在する世帯が過半数に達する.これら後継者の移動歴を検討してみると,とくに地元雇用機会に乏しい集落では,出稼ぎか一時転出を経てから地元での就労に転換するという事例が数多くみられた.世帯維持の重要な要因は,(1)所有土地(資産)の大きさ,(2)集落内の「連帯意識」,「仲間意識」の存在の2つと考えられる.そして,近隣の雇用機会の多さは,世帯の維持においてあまり決定的な条件ではないと理解された.