1996 年 69 巻 4 号 p. 242-262
本稿は,欧米において近年議論が活発になってきたフェミニズム地理学に触れるものである.フェミニズム地理学は,現実世界のあらゆる局面において生じる性差に起因した不平等的・抑圧的関係を疑問視し,このような関係がいかに社会空間に反映され,強化されていくのかを把握する学問である.
本稿では,1970年代中頃から現在までのフェミニごム地理学の展開過程をフェミニズム理論の流れと関連づけながら整理するとともに,今日の人文・社会科学全体で盛んに議論されているポストモダニズムやポストフォーディズムとの間で共有する論点についても,関連諸文献をもとにまとめた.また,フェミニズム地理学が抱える問題点にも言及した.