抄録
本稿の目的は,アメリカ合衆国シカゴ大都市圏における日本系企業の立地パターンと属性の変容過程を解明することである.シカゴ大都市圏の日本系企業は,1980年代後半以降に急増した.その分布パターンは,当初みられたシカゴ市中心部およびシカゴ市北西部のオヘア国際空港周辺への集中パターンから,1990年代に入ってシカゴ大都市圏全域での分散パターンに移行しつつある.シカゴ市内への立地要因は市場への近接性が,郊外地域へのそれは国際空港への近接性が主たるものであった.日本系企業の取引先企業は,日本系企業の進出期間が長いほど,またより郊外地域に立地するほど現地アメリカ企業の占める割合が高い傾向にある.従業員の現地採用はかなりの程度進行しているが,最高責任者のそれはいまだ一部分にとどまっている.シカゴ大都市圏における日本系企業の分布パターンと属性の変化過程は,それぞれの特徴が現地企業の全体的な空間パターンと属性の特徴に近似していく過程,すなわち空間的・属性的現地化の過程としてとらえることができる.