Geographical review of Japan, Series B
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日本における都市の発達と鉄道網, 1880年-1980年
谷内 達
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1984 年 57 巻 2 号 p. 111-123

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抄録

日本の主要都市の発達を鉄道網と関連させて概観するために, 1880年-1980年を6期に分け,各期における上位100都市の相対的地位の変化を構造的および空間的に比較検討した。すなわち都市人口および鉄道旅客収入額を指標に用いて,順位規模曲線および順位相関係数により構造的変化を検討し,順位・成長率による区分を加えた都市分布図により空間的変化を検討した。
現在の都市システムの構造的・空間的特徴および交通網の骨格は1908年当時のものと大差なく,基本的には1880年,さらには1868年以前にまでさかのぼることができる。 1880年以来の都市の発達は,都市システムの新規生成というよりも,既存の都市システムの再調整過程であった。
1880年以来の主要な変化は,大都市集中の進行と太平洋岸の縦貫線沿線諸都市の成長であった。 1908年以前には変化が比較的大きかったのに対して1908年以後は安定的で,すでに成立しつつあった大都市・縦貫線優位の傾向がさらに強まった。
1908年以前の変動は鉄道網の骨格形成期でもあったが,鉄道網の拡張と新規路線沿いの諸都市の成長との間に明白な対応関係を空間的に見出すことは困難である。むしろ鉄道網は大都市・縦貫線優位の傾向をさらに助長したと言える。三大都市圏の成長の鈍化,広域中心都市の成長,高速道路・新幹線・航空の発達などを含めて最近および近い将来の動向を考察する際にも,大都市・縦貫線の定義の若干の拡張によって,基本的な傾向は変わらないと考えることができよう。

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